2026.5.16
2026年5月2日和歌山県南部の地震 (M5.8)について(1)
佃 為成
和歌山県南部、奈良県との県境付近にて、 深さ(h)65kmの地震が発生しました。参考文献(1),(2)にあるように、和歌山県の和歌山市一帯では浅い震源の地震が多発していますが、今回の強震は、フィリピン海プレートが紀伊半島下に潜り込んだプレート(スラブ)内で発生しました。
2000年以降の震源分布を図1に示します(M>=2.0)。上から見た震源は、深さによって記号を変えています。深さ30km-90kmの震源は逆三角形です、深さ分布の図では、すべて丸の記号です。
上記のスラブ内の地震は和歌山県南部から奈良県北部にかけて線状に分布します(図のA と B を結ぶ線)。昭和の南海大地震(1946.12.21 M8.0)の後、1950年代まで、その巨大地震の余震が頻発しました。その中で、上述の線状地震帯の北部、奈良県の吉野地域直下の深さ61kmには、1952年に吉野地震と呼ばれる被害地震が発生しています。図1には、この吉野地震の位置を特別に示しました。
図2は、図1の地震の積算地震回数のグラフを示します。2007年頃から2024年頃までは、年当たり75.6回の定常的な活動を表しています。
参考文献
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佃 為成(2022):2021年12月3日紀伊水道の地震(M5.4)について(1),(2), コラボNo.8, p.89-90.
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伊藤 潔(2022):紀伊水道周辺の地震活動(1),(2), コラボNo.8, p.91-92.
(図の作成は東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)
2026.5.16
2026年5月2日和歌山県南部の地震 (M5.8)について(2)
佃 為成
2026年5月2日の和歌山県南部、奈良県との県境付近、深さ(h)65kmの地震発生の数ヶ月前からの周囲の地震活動を見てみましょう。図1は2026年1月以降の震源分布です。
フィリピン海プレートのスラブ内で発生したため、発せられる地震波は固い岩盤のプレート(フィリピン海プレート)を伝播して、地震波の減衰が小さく、遠くの西は九州、東は関東まで、有感の震動が届きました。
プレート内部の地震の発生域は、報告(1)に示しましたように、北西-南東方向の線状配列をしています。今回の地震もそうですが、この方向に引っ張りの力を受けているようです(参考文献 3 参照)。
そして、5月2日の震源断層は、上記の引っ張りを受けた横ずれ断層で、1952年の吉野地震は正断層だったそうです。
なぜこのような配置、力関係で地震が発生しているかは、まだ、はっきり分かっていません。今後の研究に期待したいと思います。
図2には、時間軸に対して地震発生の様子を縦軸に地震のマグニチュードをプロットしました(M-T図)。5月2日のM5.8の地震の大きさは際だっています。プレート(スラブ)内の地震のためか、余震が少ないです。
参考文献
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佃 為成(2021):2021年3月15日和歌山の地震(M4.6)について(1),(2), コラボNo.7, p.101-102.
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佃 為成(2022):2021年12月3日紀伊水道の地震(M5.4)について(1),(2), コラボNo.8, p.89-90.
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伊藤 潔(2022):紀伊水道周辺の地震活動(1),(2), コラボNo.8, p.91-92.
2021.12.20
紀伊水道周辺の地震活動(1)
伊藤 潔
紀伊水道の地震活動について解説がありましたが追加します(佃,解説情報)。
図1に紀伊水道周辺の震央分布を示します。
図2は図1の矩形内の地震についての深さ分布です。
×(赤)は12月3日の地震です。
この地域の地震活動は地殻内の浅い地震とフィリピン海プレートの沈み込みによる地震(およそ30km以深)に別れます。しかし,図2に見られるように,浅い地震は深さ15km程度を境に2つの層に分かれているように見えます。
図1の緯度33度50分付近の地震(緑色)です。
図3にはM≧1の地震の深さ頻度分布を示します。深さ24km付近にピークが見られます。同様な中間の深さの地震活動は四国でも見られます。
12月3日の地震はこの中間の深さに相当すると思われます。この深さの地震は比較的少数で,深い地震の屈曲部で発生しています。
さらに今回の地震は図1に示すように逆断層型で,P軸の方位はプレートの運動方向に近く,浅い地震とは違います。
また,M5.4にもかかわらず,余震は非常に少なく,12月15日までに5個,その最大のMは1.0です。
2021.12.20
紀伊水道周辺の地震活動(2)
伊藤 潔
紀伊水道の地震は深さによって,メカニズムが違っていることが知られています。
図3で示した地震の深さを考慮して図4にメカニズムを示します。
図5には、三角ダイアグラム,図6には応力軸の重ね合わせによって、深さによるメカニズムの相違を示します。
15kmより浅い地殻上部の地震は東西主圧力で横ずれか逆断層,30kmより深いプレートの沈み込みに関する地震は北東-南西に主張力を持つ横ずれか正断層が卓越しています。
地殻上部と最上部マントルの応力がおおきく異なっているのが特徴的です。最上部マントルの地震はプレート境界の滑りではなく、プレート内部の破壊を示しているようです。
プレートの進行方向に対して垂直方向のT軸が卓越しています。下部地殻の地震は,種々の型が入れ混じっているようですが,北西-南東に主張力を持つ地震が多いように思われます。
12月3日の地震は,初動による解が求められていないのですが,CMT解(図1)によるとこれと違って逆断層型です。この深さの地震はメカニズム解が少ないので,今後多数の地震のメカニズムを調査する必要があると思います。
Mizoue他(1983)では,下部地殻の地震は,その上部は上部地殻,下部はプレートと同じ型のようだとしていますが,そう簡単ではないようです。
応力の状態を知ることは,地震活動の変化を知るためにも必要です。
気象庁による一元化データを使用し,作図にはGMTを用いました。記して感謝の意を表します。
参考,Mizoue et al., 1983、地震研究所彙報,58,287-310.
佃,2021,解説情報,コラボNo.7,p100,p101.
2021.12.10
2021年12月3日紀伊水道の地震 (M5.4)について(1)
佃 為成
2021年12月3日 09:28、和歌山県御坊市付近の紀伊水道でM5.4, 深さ(h)20kmの地震が発生しました。御坊市にて震度V弱を記録しました。2021.3.15,湯浅町付近の地震(M4.6)(最大震度V弱)以来の和歌山地域の強震です。
実は、これに先立ち和歌山県南方域では、2021.11.1 にM5.0 h20km の地震が起こっています。最近この地域の地震活動が活発になっています。
和歌山県・紀伊水道地域の過去の主要な地震(M>=5.0)の地震分布とM-T図(マグニチュード – 時間)を示します。この約100年間に発生した紀伊水道・和歌山県一帯の主な地震は以下のようです。
(1): 1948.6.15 M6.7 田辺沖
(2): 1987.5.9 M5.6 紀美野
(3): 2011.7.5 M5.4 h10km 広川 湯浅
(4): 2021.11.1 M5.0 h20km 和歌山県南方沖
(5): 2021.12.3 M5.4 h20km 御坊沖
(紀伊水道南方の大きな地震は1946年南海道地震の余震など)
地震(1)から(3)の位置は 文献1) の図をご覧下さい。今度の地震分布図に、最近の地震(4)、(5) をマークしました。
文献:
1) コラボNo.7 p.100: 2021年3月15日和歌山の地震 (M4.6)について(1)
2) コラボNo.7 p.101: 2021年3月15日和歌山の地震 (M4.6)について(2)
(図の作成は東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)
2021.12.10
2021年12月3日紀伊水道の地震 (M5.4)について(2)
佃 為成
紀伊水道で発生したM5.4, 深さ(h)20kmの地震についての考察の続きです。和歌山周辺地域の地震活動が増大しているのは、フィリピン海プレートが押す力が増大していると考えられます。そこで、沈み込むフィリピン海プレート(スラブ)内で発生している非常に小さい地震を調べてみます。最近約20年間の地震(M>=1.0)の震源分布とその積算回数を示します。
紀伊水道を中心にした地域の深さ30kmより深い地震の発生率を積算回数のグラフの傾きから計算します。当初487回/年だったのが、2008年ごろから513回/年と5%ほど増大し、2016年ごろからは621回/年に、さらに2割ほど増大しています。
このスラブ内の深さ50kmでやや大きな地震(M5.4)が2018年11月2日に発生しました。その余震が精算回数のグラフに回数のジャンプとして認められます。
岩盤にかかる押しの力が少しずつ増大しているようです。
参考:
コラボNo.7 p.100: 2021年3月15日和歌山の地震 (M4.6)について(1)
コラボNo.7 p.101: 2021年3月15日和歌山の地震 (M4.6)について(2)
(図の作成は東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)




