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2025.4.29
 

  2025年4月長野県大町付近の地震 

  

          佃 為成

 

 

 

2025年4月18日に糸魚川・静岡構造線に沿った長野県大町市付近でM5.1の地震が発生しました(震源断層は横ずれ)。

 

この付近は、1918年11月11日に歴史地震として著名なM6.1とM6.7の双子地震があった所です。
 

なお、その北10数kmでは、1986年12月30日にM5.9(1)、その北の長野県白馬村では2014年11月22日にM6.7の長野県神城断層地震(2)が起こっています。
 

糸魚川・静岡構造線断層帯と上記の地震の震源を含む2000年以降の震央分布を図1に示します。なお、図1, 図2の地震活動図作成には、東大地震研究所TSEIS web版を用い、気象庁データJMA_PDEを使用。
 

2025年4月18日に発生したM5.1地震の余震が造る震源ラスターの北隣りには別のクラスターが存在します。このクラスターは、2011年の東北の地震(M9.0)の後から目立つようになりました。以前ご紹介した上高地の地震活動のときのように(3)。
 

 

参考文献:
(1)佃(1989):広義の前震・余震活動を伴った1986年長野県北西部大町付近の地震(M5.9)の震源過程と地震テクトニクス,地震研究所彙報 Vol.64 pp.433-456.
(2)佃(2016):2014年長野県白馬村の地震の予知, コラボ No.1 p.35.
(3)佃(2020):2020年上高地の群発地震について(1),(2),(3), コラボ No.6 p.80, 81,83.

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2016.1.17

      長野県白馬村の地震の予知

                                            佃 為成

 

2014年11月22日のM6.7長野県北部地震(長野県神城断層地震)は、1986-90ごろからその地震像が描き出されていました(地震予知総合研究振興会,1990,地震テクトニクスに関する総合研究 第3章 北部フォッサマグナ周辺に発生可能な地震像,83-142.)。

 

 その主な根拠は、

 

1) 歴史上の地震(1714年 M6.3)の存在

 

2) 活動度Aの活断層(神城断層)の存在

 

3) 1714年の地震以後、白馬付近では目立った地震活動はない。長期の空白域である。

 

4) この糸魚川・静岡構造線に沿った地帯は、連鎖的に地震が発生する(1714, 1858, 1890, 1918年の各地震)。

 

5) 1986年の地震(M5.9)が前駆的な地震活動である可能性がある。

 

6) 90年間の三角測量(三辺測量)によると地殻歪が集中的に蓄積している。ねじれの歪みを「せん断歪」といい、各地点で、いろんな方向のなかで最大のもの、最大せん断歪は4~6x10-5(5~7x10-7/yr)。先の地震(1714年)から蓄積したとすると。緩和された分を考慮しても、地震がもうすでに発生してもよいという確率は高い。歪蓄積の範囲から規模を推定するとM6~7。

 

 白馬地域を主なターゲットとした1995-2008年の東京大学地震研究所の共同研究プロジェクト「内陸直下地震の予知 - 地震研究所特定共同研究A」では種々の観測がおこなわれました。

 

 その中で、白馬倉下の湯温泉の源泉(白馬鉱山HR-1号泉)に於いては1998年10月から2015年4月12日まで水温の連続観測がおこなわれました(その後は井戸の仕組みが変わったため観測継続断念)。

 

 水温グラフのだいたいの傾向に注目すると、地震の5年ほど前から、それまではほぼ一定(若干下降-0.17℃/year)だった水温に明瞭な下降傾向が見えます(-1.5℃/year)。これは、震源域の神城断層付近では地震の前からねじれ歪が生じ、断層の西側、下盤側に位置する倉下の湯直下では引っ張りが働き、岩盤膨張、圧力低下、上昇流体の量減少、そして水温低下となったと考えると理解できます。 温泉は地震後自噴が停止しました(12月18日には回復)。これも地震による、より大きな岩盤膨張のためと理解できます。

 

 

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図1.  糸魚川・静岡構造線断層帯付近の震央分布。図2.  大町付近の震源クラスター。

図2.  大町付近の震源クラスター。図1の記号Aで示した長方形の枠内の地震。

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