長野県白馬村の地震の予知
2016.1.17
佃 為成
2014年11月22日のM6.7長野県北部地震(長野県神城断層地震)は、1986-90ごろからその地震像が描き出されていました(地震予知総合研究振興会,1990,地震テクトニクスに関する総合研究 第3章 北部フォッサマグナ周辺に発生可能な地震像,83-142.)。
その主な根拠は、
1) 歴史上の地震(1714年 M6.3)の存在
2) 活動度Aの活断層(神城断層)の存在
3) 1714年の地震以後、白馬付近では目立った地震活動はない。長期の空白域である。
4) この糸魚川・静岡構造線に沿った地帯は、連鎖的に地震が発生する(1714, 1858, 1890, 1918年の各地震)。
5) 1986年の地震(M5.9)が前駆的な地震活動である可能性がある。
6) 90年間の三角測量(三辺測量)によると地殻歪が集中的に蓄積している。ねじれの歪みを「せん断歪」といい、各地点で、いろんな方向のなかで最大のもの、最大せん断歪は4~6x10-5(5~7x10-7/yr)。先の地震(1714年)から蓄積したとすると。緩和された分を考慮しても、地震がもうすでに発生してもよいという確率は高い。歪蓄積の範囲から規模を推定するとM6~7。
白馬地域を主なターゲットとした1995-2008年の東京大学地震研究所の共同研究プロジェクト「内陸直下地震の予知 - 地震研究所特定共同研究A」では種々の観測がおこなわれました。
その中で、白馬倉下の湯温泉の源泉(白馬鉱山HR-1号泉)に於いては1998年10月から2015年4月12日まで水温の連続観測がおこなわれました(その後は井戸の仕組みが変わったため観測継続断念)。
水温グラフのだいたいの傾向に注目すると、地震の5年ほど前から、それまではほぼ一定(若干下降-0.17℃/year)だった水温に明瞭な下降傾向が見えます(-1.5℃/year)。これは、震源域の神城断層付近では地震の前からねじれ歪が生じ、断層の西側、下盤側に位置する倉下の湯直下では引っ張りが働き、岩盤膨張、圧力低下、上昇流体の量減少、そして水温低下となったと考えると理解できます。 温泉は地震後自噴が停止しました(12月18日には回復)。これも地震による、より大きな岩盤膨張のためと理解できます。