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                            2024.3.18

 

地下からの高温水混入の現場:岩国の水温変化

 

                         佃 為成

 

 

部熱水の混入と思われる現象が山口県岩国市の民家の浅井戸で見つかっています。

 

事の起こりは、2000年10月頃です。さらに、2001年3月24日の芸予地震(M6.7)の前日の朝(この日から蛇口において井戸の所有者・故堀本忠男氏がほぼ毎朝水温測定実施),蛇口をひねると49℃,地震当日の朝も48℃であり,この日は水が白濁したそうです。

 

地下から浸入してきた高温水が井戸上部に溜まり、蛇口をひねると熱い水。しばらく流すと普通の温度の水になるのです。

 

2001年4月23日からこの井戸において水温の連続観測を開始しました。観測開始以降,蛇口において40℃を越すような極めて高い水温は1年あまり測定されませんでしたが、2002年5月29日に41.9℃、6月7日に41.2℃、6月12日に47.0℃の高温が再び記録されるようになりました。

 

井戸の中の水温データには、例えば2002年9月には水温の一時的な上昇変化が記録されています。その後、高温の出現は影を潜めましたが、水温のパルス的な上昇も時々観測されますので、高温水の浸入は現在でも起こっているようです。

 

長期的変化を見るために季節変化を取り除きますと、2013年頃までは水温変動のゆらぎが大きかったのですが、それ以降は、水温の長期的上昇傾向が見えます。

 

高温水が出た、明治時代に造られた深さ約5mの井戸(岩国A)と、その井戸から約2mしか離れていない2001年に掘られた新しい井戸(深さ約10m)(岩国B)の水温データを示します。

 

上方のグラフは、2つの井戸の水温の1日平均値(2024年3月14日まで)。下方のグラフは、その値から季節変化を差し引いたもの。

 

新しい井戸(岩国B)では最初、浅いところにセンサーを設置しました。最上部に溜まる高温水を効率よく測りたいと思ったからです。しかし、高温水浸入は弱いことが分かりました。

 

季節変化を取り除いたグラフは、どちらも2016年ごろまでは横ばい、それ以降から上昇傾向にあります。両方とも、高温水浸入の気配があります。髭のような上昇温度がときどき見られます。

 

なお、当初は3つのセンサーによる水温観測、電気伝導度の測定、水の化学成分の分析などを実施しました。その報告は下記論文に載っています。2008年9月10日からは、システムを単純化し、新しい機器を用いて観測しています。

 

参考文献

Tsukuda T., K. Gotoh and O. Sato,  Deep groundwater discharge and ground surface phenomena, B.E.R.I., Univ. Tokyo, 80, 1-27, 2005.

               

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