2021.3.23
2021年3月15日和歌山の地震 (M4.6)について(1)
佃 為成
和歌山県北部湯浅町・広川町付近でM4.6, 深さ(h)4kmの地震が発生しました。震源が非常に浅かったので湯浅町にて震度V弱を記録しました。
和歌山県北部は浅い地震が絶えず発生する地域です。群発地震の巣と言えます。岩盤の強度がやや弱いところは、外部からの力が少し大きくなると、小さい地震を多発させます。
このような地域は、和歌山県北部地域だけでなく、北部近畿の丹波地域、長野県の北アルプス地域や長野市松代地域、東京都の伊豆大島の南、神津島付近から三宅島付近へ至る海域などが有名です。
和歌山県地域の過去の主要な地震(M>=4.5)の地震分布とM-T図(マグニチュード – 時間)を示します。この約100年間に発生した和歌山県北部一帯の主な地震は以下のようです。
(1): 1948.6.15 M6.7 田辺沖
(2): 1987.5.9 M5.6 紀美野
(3): 2011.7.5 19:18 M5.4 h10km 広川・湯浅付近
(4): 2021.3.15 00:26 M4.6 h4km 広川・湯浅付近
活動には約10年の波があります。特に南海トラフでの1946年南海地震(M8.0)後に地震が非常に活発になりました。その地震群で最大のもの(1) は田辺沖で発生しました。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)発生後もやや活発になっています(次の報告をご覧下さい)。その地震群の最大のもの(3) の震源は、今回の地震(4)の震源の近傍にあります。(3)の地震から今回の地震(4)発生まで、約10年経過しています。
また、2004年9月5日には紀伊半島南東沖(熊野灘) M7.1, M7.4 の大地震が発生していますが、その前後は、地震活動がやや活発化しています。小さい地震は2001年~2002年ごろ増加しています(次の報告)。
2021.3.23
2021年3月15日和歌山の地震 (M4.6)について(2)
佃 為成
和歌山県北部湯浅町・広川町付近で発生したM4.6, 深さ(h)4kmの地震についての考察の続きです。非常に小さい地震を見るため、最近約20年間の地震(M>=1.0)の震源分布とその積算回数を示します。
大きい地震だけでは分からなかった性質が見えてきます。
和歌山県一帯の浅い地震(h<30km)の発生率を積算回数のグラフの傾きから計算しますと、この約20年間は、だいたい 4.07 回 / 日 となります。ほとんど無感地震ですが、毎日約4回の地震が発生していることになります。
グラフを細かく見ますと、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)の発生後、地震回数に若干増加が見られます。このように非常に小さい地震の発生の仕方が、遠方の大きな地震に影響を受けていることが分かります。紀伊半島に比べ東北に近い、中部地方の穂高岳付近や立山の南の地域の群発地震では、M9.0地震発生直後から影響を受けていました。コラボNo.6 解説情報: 「2020年4月上高地の群発地震について(1)」をご覧下さい。
さらに、2006年から2011年の間は、3.88 回 / 日 のように4~5% ほど、発生率が低下しています。
M9.0地震前の約5年間の活動静穏化の原因については、コラボNo.6 解説情報: 「日本列島中央部深発地震活動の変化」で示しましたように、その間、太平洋プレート内の微小地震の発生率が増加していたことと関係があるかもしれません。
2004年9月5日の紀伊半島南東沖(熊野灘) M7.1, M7.4 の地震の前に、2001年~2002年頃から微小地震の発生率が増加しています。このころは北近畿の各地で、様々な地下のサインが見つかっています(例えば、コラボNo.6 観測情報: 「近畿地方の観測情報」)。
(図の作成は東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)