2024.2.11
2024年能登半島地震
伊藤 潔
能登半島地震(2024-1-1)から1ヶ月以上経ちました。図1に1990年からのM≧3の震央分布を示します。
四角の範囲では2018年から群発地震が発生し,2020年に拡大し,さらに2023年5月5日にM6.5の地震が発生しました(伊藤,2023など)。
今回の地震はこの群発地震の付近から両側に広がり全長150kmに及ぶM7.6の大地震となりました。日本海側の地震では最大級です。
また,M6.5の大地震が群発地震域で発生するのは珍しいことですが,その中でさらに大きな地震が続けて発生するのもほとんど無いことです。
破壊過程の予測は大変難しいことが再確認されることになりました。
図1にこの範囲のM6以上の地震の発震機構を示しますが、すべて同じような逆断層です。震央分布の北西側の海底には活断層があり,少なくとも本震より南西側では,断層に向かって震源が浅くなっているようです。海岸の隆起などからも能登半島が逆断層の隆起する部分に当たります。
本震の北東近傍には1993年M6.6,南西端には2007年M6.9の地震が発生していて,その間を埋めるようにM7.6の大地震の半分が起き,さらに佐渡島の方に拡大しています。その際,北東に広がった地震はやや遅れて発生したようです。
図2にM-T分布と地震数の積算値を示しますが,活発な余震活動が続いていることが分かります。
図1の四角の範囲がこれまでに報告してきた2018年以降の群発地震の範囲で,この部分の震央分布を図3に示します。灰色のA,B,C,Dが2018年からM6.5までの群発地震,青は2023年のM6.5から12月末まで,赤紫と赤が2024年の地震です。4つの群発地震群のC,Dを北に拡大するようにM6.5の地震が発生し,群発の中央東よりの部分にM7.6の大地震が発生し両側に拡大したようです。
解析には気象庁の一元化震源及び発震機構のデータを用いGMTを用いて作図しました。
伊藤(2023)コラボNo.9,p85,
p86など。
2023.5.14
能登半島沖の地震(2023.5)
伊藤 潔
能登半島の群発地震が続いていましたが,5月5日にM6.5の地震が発生しました。
図1は長期間の震央分布です。
図2は矩形の範囲内のMT図。
図3は2018年以降の群発地震を含めた震源分布を示します。
M6.5の本震は,群発域の北東端で発生し,能登半島北岸の群発域C,Dに沿って拡大したようです。図3の青が本震後1時間以内の地震です。その後,地震域は大きく拡大し,図1でも分かるように1993年M6.6の震源域まで達しています。
図3には震源の立体的な広がりを示すために,平面と深さを同じスケールで示しています。本震後北西方向に浅くなる地震分布が見られます。本震の発震機構は,それ以前の群発地震のものと同じで,主圧力軸が北西―南東方向の逆断層です。北方に拡大した地震はやはり逆断層ですが,主圧力軸が東西に近く,別のクラスターになっています。図2によると地震は減少しているようですが,北方の活動を含めて長期化するかもしれません。
2022.3.5
能登半島の群発地震(2018~)(8)
伊藤 潔
能登半島の先端付近の群発地震は,最近やや少なくなっているようですが継続しています。
図1は震央分布で赤は今年の地震です。活発な様子が分かります。
図2にはM≧3の地震の分布ですが,拡大するのではなく,これまでに大きめの地震が無かった地域を埋めるように発生しているように見えます。
前回(7)で拡大しているように見えると報告しましたが,大きめの地震は活動域の中心付近に集まってきているようです。
活動は4つの地域のうち,北側のC,Dで主に継続していますが,2つの地域の間が埋まっていくように見えます。
図3は4つの地域の2021年からのM-T図とM≧0の地震数の積算値です。最近はC,D地域でも地震がやや減少しているように見えます。
図4には日別頻度分布を示しますが,活動が収束に向かっているようにも見えます。ただ,まだ相当活発な活動が起きていますし,他の地域に活動が移動することも考えられますので,しばらくは注意が必要でしょう。
図は気象庁一元化震源を利用してGMTによって作成しました。
2022.11.17
能登半島の群発地震(2018~)(7)
伊藤 潔
11月14日に能登半島の先端付近で震度4の地震が発生しました。群発地震はまだ活発です。最近の状況を報告します。
図1に気象庁よる地震の震央分布を示します(2018年1月1日-2022年11月15日,M≧0,深さ≦30km)。
10月以降の地震を赤で示しますが,CとD領域で多数の地震が発生しています。
図2にM≧3の地震の震央分布を示します。色の区分は図1と同じ期間にしてあります。6月にM5.2のこれまで最大の地震がD領域のCとD境界近傍で発生し、CとDの境界がわからなくなっていました。
今回のM4.2 の地震はC領域ですが、CとDの境界近傍で発生し、8月以降の活動は図1に示すようにCとDの境界が曖昧で、3つの地震群があるようにも見えます。いずれにせよ、能登半島北部の海岸付近を埋めるように活動が継続しています。また、図2ではM≧3程度の地震はそれ以前の地震の空白域を埋めるように発生しており、群発領域を大きく拡大するような活動は見られません。
図3に4つの地震群のM-T分布と数の積算値を示します。
積算値はスケールが異なりAとCは10倍近く違います。C領域は最も活動が活発ですがやや落ち着いてきているようです。
図は示しませんが、GPSの変化も6月を境に落ち着いているようにも見えるので、そろそろ活動が低下するのではないかと期待してます。2018年の開始からもう4年になります。
最近下記のような報告がありました。興味ある方は参照。
*11月10日の地震調査研究推進本部(気象庁と国土地理院の報告)
https://www.static.jishin.go.jp/resource/monthly/2022/2022_10.pdf
*東京工業大学(中島淳一)による地下の速度構造解析と水による群発地震という仮説による解釈
https://www.titech.ac.jp/news/2022/065274