2024.11.12
南紀地域の観測情報
佃 為成
南海トラフの大地震を監視するため、東海地域と同じく南海地域の和歌山県南紀地域にて地下水の水温と水位の観測をおこなっています。その中でいくつかの観測点のデータを紹介します。図1は観測点の位置を示しています。
図1 は観測点分布。
図2のトップから潮岬の林組の井戸(HA)、 和田商店の井戸(WA)の水位です。
WAでは 95mm/年の率で上昇中。 HA も同様。地面がこの率で下降していると考えられます。HA では、2016年頃から水位は横這いのようにも見えますが、WAでは2022年ごろまでは同じ上昇率です。最近はWAも横這い。
次は、潮岬の林組(HA)と和田商店(WA) の水温。いずれも1年間に約0.05℃の上昇率。WAでは,2016年頃からは上昇率が倍(0.117℃/年)になっています。潮岬直下では岩盤の圧力が増大しているようです。ただ、最近は水位、水温とも上昇停滞か。
WA(水位、水温)は、機器故障のため、2023.9.28以降のデータ回収できず。
一方、その下のグラフ、古座川の温泉(KZ)では2015年中頃までは下降傾向。ここではGPSのデータからも地面が伸びているのが分かっています。つまり岩盤が伸び、深いところの熱い水の上昇量が減ってきているのです。
ところが、2015年後半から1年間に0.22℃の上昇率の急上昇です。2016年後半から水温は下降へ。
湯川(YK)の水温は2007年末から2008年初めにかけて、39.0℃から37.0℃のレベルに低下しましたが、その後上昇、2014年に入り異常な上昇、2014年の2月14日から3月17日までは50℃を越える高温異常(機器故障か不明)。
なお、2017年後半から機器故障のため欠測、2018年7月11日に再開しましたが、9月の台風24号の大雨洪水により機器が流され現在欠測中。再開のメド立たず。
図2は水位と水温データ(~2024年11月上旬)。
KZ は2019.1.16より機器故障により欠測、2020.1.15に機器交換。水温は、白金の電気抵抗の変化、水位は半導体感圧素子の変化から、水位(井戸水の高さ)の変化を測ります。
HA は2014年7月より新しい器機使用(水温については以前の傾向に合わせるため0.19℃加算)。HAでは地下水が流れているせいか、2018年台風24号の大雨のため水温が著しく低下しましたが、近くのWAでは、台風の影響は微弱。
2023.10.1
南紀地域の観測追加情報
佃 為成
南海トラフの大地震を監視するための観測のうち、和歌山県古座川町 ぼたん荘(BT), 那智勝浦町(KT), 田辺市本宮(HN)の水温データを示します。BT は地図に記していませんが、その泉源は KZ の西へ数100m の距離。
[古座川町 ぼたん荘(BT), 那智勝浦町(KT), 田辺市本宮町(HN)の水温データ]
(BT~2023年3月25日まで, KT~2023年9月27日まで, HN~2020年8月29日まで)
いずれも白金抵抗体センサー使用。BT は温泉施設の地下貯水漕での測定なので、精度は高くないが、 長期的なトレンドは分かります。KZ と同じくわずかに下降傾向。2011年台風12号の洪水浸水で測定システムが被害を受け、2012年に再開。2016年ごろから顕著な下降が見えます。 ところが、2020年7月中旬から0.092℃/dayの率で急上昇。2021年末には急降下。これら急変の原因は不明。BT は施設閉鎖となり2023年3月観測終了。
KTでは、2013年以降、擾乱が小さく、やや下降へ転じました。2018年以降、原因不明の急上昇や急下降が見られます。記録計故障(2021.10.28 – 2022.9.30)。2023.3.27より観測再開
田辺市本宮町(湯の峰)の温泉(HN) では、0.64℃/year の上昇が2011年頃からほぼ一定になり、2015年頃から下降傾向を示しています。なお、2017年後半から計器故障のため欠測、2018年7月11日に観測再開。新しい計器の数値に-4.5℃を施して連続性を保つようにしています(まだ、暫定措置)。2020年8月17日より共同浴場解体工事が始まり、観測不能となりました。2022年4月22日から浴場営業開始となりましたが、センサーを投入している貯水槽が密閉式となり、現在も観測できていません。
図1 観測点分布。
見出し h1
[古座川町 ぼたん荘(BT), 那智勝浦町(KT), 田辺市本宮町(HN)の水温データ]
(BT~2022年9月30日まで, KT~2021年10月28日まで, HN~2020年8月29日まで)