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2019年山形県沖地震(M6.7)の意味(3)

- 発生前の広域地震活動静穏化 -

 

                      佃 為成

 

大地震が起こる前に、まわりの地震の発生率が低下する現象、地震活動の静穏化が、日本海東縁変動帯で2019年6月18日に発生した山形県沖地震(M6.7)の約1ヶ月前から起こっています。

 

上の図は、2019年1月1日から2019年7月1日までの日本列島内およびその周辺の地震分布(震央分布)です。地震のデータについて、地図に震源の地理的範囲、図の最上部の欄に、観測期間、プロットされた震源の数(N)、震源の深さ(H)の範囲、マグニチュード(M)の範囲が記されています。

 

下の図は、その観測期間の地震回数のグラフを示します。地震が発生すると地震の回数に1だけ足します。これを繰り返していきます。スタートを2019年1月1日0時0分とし、時間の経過と足し合わされた地震回数(積算地震回数)のグラフを作ります。

 

グラフは曲線ですが、ある期間では、だいたい直線になります。その傾きを調べますと、図の通り、2019年5月ごろまでは218回/日で、それ以降、M6.7の地震が発生するまでの2019年6月18日の期間では183回/日となっています。 図をプリントして斜めから線を眺めると傾きの変化がよく見えます。わずかですが、発生率(直線の傾き)が10%小さくなっているのです。

 

ただ不思議なことに、地域を東北地域に限って調べると、静穏化は見つかりません。どういうわけか、もっと広域の地震活動の変化が起こっていたのです。また、静穏化の逆、活発化が起こることもあります。このように、静穏化現象についてはまだ謎も多いのです。

 

しかし、静穏化が見つかったら、大地震発生の可能性があるとして、注意をすることは防災上大事なことです。

 

参考:

解説情報 東北地方太平洋沖地震前の地震活動静穏化   2019.11.22

解説情報 日本列島の地震活動静穏化(2019.9 - ) 改訂(1)  2019.11.22

  註:

記号のこと。専門家の慣習として震源の深さはDEPTH の H を用います。 

なぜなら震央距離にDistance の D を使うからです。

2019.6.25

       2019年山形県沖地震(M6.7)の意味

 

                      佃 為成

 

 新潟から北海道にかけての日本海沿岸地域では、この100年ぐらいの間に新潟沖、粟島付近の1964年6月16日新潟地震(M7.5)、秋田県沖の1983年日本海中部地震(M7.7)、北海道南西沖地震(M7.8)などの大地震が発生しました。そして、新潟地震の震源域の北隣に、2019年6月18日、山形県沖地震(M6.7)が発生したわけです。

さて、上述の地震活動を理解するために基本かつ必須の情報は、「日本海東縁変動帯」についてです。

 日本海東縁地域の海底には多くの活断層が存在し、東北日本のプレート(北アメリカとくっついていると考え、北米プレートと呼ばれる)とアジア大陸を乗せているユーラシア・プレートの境界だと考えられています。活断層は昔の大地震発生の跡を意味しますが、現在でも大地震が頻発しています。

 一方、太平洋側の日本海溝沿いではプレートの沈み込みが起きています。日本海東縁では東西の両プレートが押し合っていますが、まだ、沈み込みの状況にはありません。最近の大地震がすべて、日本海側が日本列島側に潜り込むタイプの地震です。いずれはプレート全体が潜り込むようになるのでしょう。

         

 

 約100年間の日本海東縁の地震活動(M4以上)を眺めて見ると、大きな地震の余震域が連なりますが、山形県沖の辺りは空いています。今回の山形県沖地震(図の★)は、それを埋めるには勢力が足りません。また、1964年新潟地震の余震域の北端とダブっています。

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(図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用)

                 2019.6.25

    

     2019年山形県沖地震(M6.7)の意味(2)

 

                  佃 為成

 

 2019年6月18日、山形県沖地震(M6.7)が、日本海側の岩盤が東北日本の岩盤に入り込もうとする起こり方をしているのを確認しましょう。余震の分布からM6.7の地震断層の形が見えてきます。図の大きい丸が本震の位置です。西から東に傾斜しているのが分かります。水平方向と深さ方向の縮尺が100対57になっているので、実際は見かけより大きく東に傾斜しています。

 次の図は、震源分布図に示された領域での地震発生の時間経過の図です。地震が発生した時間(T)にそのマグニチュードMを“立て棒”で示します(MT図と呼びます)。直前の約1ヶ月には地震が1回も記録されていません。いわゆる前震はこの場合確認できません(検出できないくらい小さい地震の可能性あり)。

 次は地震の規模別頻度分布です。規模(M)の大きさを0.1毎に区切り、数を勘定してプロットします。その数nを△印で表しています。それぞれのM以下の数を積算した数がNです(○印)。図のように、それぞれ対数をとってプロットするとほぼ直線のカーブになります。その傾斜の値をb値といいますが、この場合0.754です。これは普通(0.8~1.0)よりやや小さいですが、とくに小さくはなく、この地震活動が次の差し迫ったもっと大きな地震の前震である可能性は低いと判断できます。

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山形県沖190625-4.jpg
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(図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用)
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