中国地方 島根県
2019.10.4
島根県海潮温泉と地震
佃 為成
2000年10月6日に発生した鳥取県西部地震(M7.3)の前、島根県雲南市大東町の海潮温泉3号泉では10月4日に湧出量が激減しました。
地震の前日にはほぼ回復し、地震後は白濁したことがわかっています。それを受けて、東京大学地震研究所は、2001年4月、水晶温度計による精密水温観測を開始したのです。
2006年4月、新しい4号泉開設に伴い、3号泉のポンプは稼働停止しました。そのため、水温が以前の34℃前後から徐々に下降し、現在では25~27℃程度になりました。水晶温度計の観測は、機器故障のため2015年12月9日で終了し、2016年11月21から、白金抵抗体温度計の観測に転換。この器械は、ときどき文字化けというデータ異常が発生しています。原因はまだ不明。
文字化け部分を削除したデータは、度々、データ抜けになります。
2008年5月12日の中国の四川大地震(2,700km離れています)、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震のような大きな地震のゆっくりした地盤の大きな揺れは、温泉水温の上昇変化を起こします。温泉水が上がってくる通り道は岩盤内の亀裂の群です。岩盤が揺らされるとどこかの亀裂がぽかっと口を開けて、温泉水が通りやすくなり、地震の後、水温が顕著に上昇するのです。時間が経過すると、口を開けた亀裂は、また閉じてしまいます。この急上昇した水温が徐々にもとに戻ります。
2016年以降の新しい温度計には、2018年4月9日に島根県西部、三瓶山の北西部で発生したM6.1の地震に伴う変化が記録されました。直後の上昇(0.4℃)後、約10日後に元の水温に戻り、その後は水温はしだいに下降しています(-0.7℃)。観測点付近の地下岩盤は地震後膨張したものと考えられます。
註:水晶温度計のセンサーは深さ45mに設置されていましたが、新しい白金抵抗体温度計では深さ25mです。したがって水温は約5℃低くなりますが、計測値に+5℃加算して表示しています。
2018.4.13 2018.4.16改定
2018年4月9日島根県西部の地震について
佃 為成
山陰地方の鳥取県ではこの70~80年の間にM7クラスの地震が2回も発生するなど地震活動が活発ですが、島根県は1872年の浜田地震(M7.1)以来、大きな地震がありません。M6程度の地震も1978年以来発生していませんでした。今回の地震(2018.4.9 01:32 M6.1 深さ12km)は久々の顕著地震です。
今度の地震発生域は、山陰海岸に沿って南西-北東方向に伸びる地震帯と、これにほぼ直交する北西-南東方向に島根県から広島県北西部へ伸びる地震帯がぶつかる地域です。
まず、中国地方中央部の1998年以降の微小地震分布を示します(2018.4.8まで)。陸地であればM1.0ぐらいの小さい地震でも検知もれがありません。4月9日のM6.1は、横ずれの断層(鉛直面)をつくりました。余震もその断層に沿っています。この地震断層の南は、いわゆる地震空白域になっています。その中心には火山の三瓶山(標高1,126m)があります。今回の地震は空白域の縁で発生しました。この広い範囲の地震の数を時間経過にそって数えていきます。この積算地震回数の曲線を眺めますと、期間ごとにだいたい直線で近似できますが、その直線の傾きは地震発生頻度(地震回数/期間)の大きさを表します。2003年ごろから2011年の東北地方太平洋沖地震(M9.0)発生のころまでは、発生頻度がやや低く、M9.0地震のころからやや活発化したことが窺えます。
次に、今回の地震活動域付近に焦点を当てます。今度はM6.1の地震後の4月11日までの地震分布(余震分布も)を示しました。右に積算回数のグラフも示します。2011年以降の活動活発化はより明瞭です。Aと記した地震群のすぐ東にM6.1地震が位置します。Aの活動は、実は、2013年ごろからやや活発になっていました。また、Bの地震群は主に2011.6.4 M5.2(深さ11km)の地震とその余震です。この地震域と今回の地震域の間はいわゆる空白域(三瓶山の周囲)になっています。火山の直下は岩盤がやわらかいので地震は起こしにくいのです。
ただ、火山近傍でも大きな地震が発生することがあります。この空白域あたりで小さな群発性の地震活動がはじまったら要注意です。
(図の作成は東大地震研究所TSEISのweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用)
2018.4.13
島根県西部の地震について
石原和弘
佃さんの示された図で、今回の地震群とBで示された2011年の地震群の間の地震の“空白域”の真ん中には、中国地方の代表的活火山:三瓶山が鎮座しています。他の火山でいえば、2008年の岩手宮城内陸地震の際の栗駒山の周辺で認められた地震の空白域に相当するものでしょう。
気象庁資料によれば、この“空白域”ではマグニチュード0~1のごく微小地震が年に数回観測されています。
今後、年間10回以上の地震が観測された場合には、「三瓶山が数千年ぶりに目覚め始めた模様」との認識に立って火山活動の監視を強化する必要があります。