ここに注目
2025.10.24
東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動
(2016年4月1日~2025年10月15日)
佃 為成
東海地震の予測のため、遠州灘の南海トラフから北西方向へ潜り込んでいるフィリピン海プレート(フィリピン海スラブ)の微小地震活動を監視しています。
これまで度々報告して参りましたが、今回は最近約10年間の極微小地震活動と、2025年に入ってからの活動の揺らぎにも注目します。
最初の図は、気象庁の観測処理が向上 (参考文献) した2016年4月1日以降、最近の2025年10月15日までに深さ30-80kmで起こった、M0.5以上の地震の震源分布です。
次の図は、震源分布図に示された地震の積算回数のグラフです。2019年初め頃 (図の縦矢印)から、それまでの2.14回/日から2.51回/日へと1.7割ほどアップしています。
ところで、今年の6月頃から発生率が3.71回/日と2019年以前の7割ほど増加しています。この変動は数ヶ月続いています。なお、1ヶ月程度の変化は、図の2017年末ごろにありましたが、今回のような大きな変動は初めてです。注目しましょう。
一方、同じ領域の浅い地震(深さ30km未満)について積算地震回数を調べると、こちらは、発生率が2021年頃から約1割弱減になっています。スラブではプレートの押しの強まりで微小地震回数が上昇、その上の地殻にかかる押しの力が弱くなって、御前崎の沈下速度が低下し、地震発生が抑えられていることを示しています。
(図の作成には東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)
2025.3.27
和歌山県南紀潮岬付近の上下変動
--- 2005年1月1日から2024年12月31日まで ---
佃 為成
南紀観測報告(2025.3.26)の潮岬における地下水位は長期的に9.5cm/年の割で上昇していましたが、最近は停滞しています。
これは、熊野灘の南海トラフから北西方向へフィリピン海プレートが潜り込んでいて、この潜り込むプレートに引きずられて紀伊半島南端の潮岬の地面はどんどん沈下していくと考えられます。そのスピードが最近低下してきたことを示しています。今度は、地面の上下変動をGPSの測定データから検証してみましょう。
解説情報(2025.1.6 )では、掛川に対して、御前崎の地面の高さがどのように変化しているかを、国土地理院のGPSデータ(GNSS)で示しました。2005年から2020年頃まではほぼ直線的に0.671cm/年の率で降下しています。それが、2020年頃から減少率は、その半分ぐらいの0.386cm/年の率に減少しています。
ここで、スピードの値が大きく違いますが、測地データの場合は、ある基準点に対する相対的な変化を表しています。それに対し、地下水の水位変動は、その場の上下動を表しています。基準点も沈下して行きますので、測定点はそれに対してさらに沈下しているのです。
今度は、潮岬(串本)に対して同じような考察を試みます。図の国土地理院のGPSデータは、三重県紀宝町鵜殿に対する串本の地面の高さの違いの時間変化を見ています。2016年ごろから沈下の速度が-0.55cm/年から-0.42cm/年に変化しています。
参考までに、四国の室戸岬についてのグラフも示します。高知県安芸市安芸に対する室戸の上下変動です。こちらでは、2021年ごろから沈下のスピードが4割ほど上がっています。潮岬や東海地方の御前崎のように、最近沈下スピードが小さくなっているのと反対の変化です。
御前崎が遠州灘の東海地震発生域、潮岬が熊野灘の東南海地震発生域についての変動を表していると考えられます。東海地震や東南海地震の発生の前兆の可能性があります。
図(気象庁報道発表 南海トラフ地震関連解説情報について
- 最近の南海トラフ周辺の地震活動 - , 2025.3.7 の図に直線などを挿入 )
2025年2月7日
気象庁が2025年2月7日に発表した「南海トラフ地震関連解説情報について -最近の南海トラフ周辺の地殻活動-」のなかで「ゆっくりすべりに関係する現象」を報告しています。
GNSS観測によると、2019年春頃から四国中部で観測されている、それまでの傾向とは異なる地殻変動は、2024年秋頃から鈍化しています。また、2022年初頭から、静岡県西部から愛知県東部にかけて、それまでの傾向とは異なる地殻変動が観測されています。



