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              2020.5.23

2020年4-5月上高地の群発地震 について(3)

 

                    佃 為成

 

上高地付近で2020年4月にはM5.5, M5.0の地震(4月23日)を主震とし、5月にもM5.4の地震(5月19日)を主震とする群発地震が発生しました。

 

5月の活動は長野県から岐阜県飛騨地方へ拡大しました。これら一連の地震は上部地殻の非常に浅い所(0-10km)で発生しています。

 

上図は、4月の震央分布、中図は5月の分布です。4月から5月の地震発生の時系列は下図、M-T (マグニチュード - 時間) 図に示します。

 

4月からの主な地震は

2020.4.23 13:44 M5.5 h3km  (h:Depth) 長野県中部

2020.4.23 13:57 M5.0 h5km 長野県中部

2020.5.19 13:12 M5.4 h3km 岐阜県飛騨地方

 

一方、5月18-19日に東北地方太平洋沖で有感地震がいくつか発生しました。その主なものは

2020.5.18 12:00 M5.2 h51km 宮城県沖

2020.5.19 12:17 M5.4 h50km 福島県沖

 

飛騨山脈地域と東北地方太平洋沖の地震活動が相呼応しているように感じられます。

 

前(参考文献)にも述べましたように、2011年3月の東北地方太平洋沖地震(M9.0)の活動のときも、M9.0地震の10分後には飛騨山脈一帯で群発地震が発生しました。

 

このように、時々、太平洋プレートの大きな動きに関係すると思われる地震活動の「連携性」が見られます。日本列島が乗っているプレートはフォッサマグナ(大地溝帯)の糸魚川構造線で、西南日本と東北日本のプレートに分かれており、東北日本のプレートは太平洋プレートに押され、西側のプレートを押します。西側プレートの縁はどんどん押し上げられ、飛騨山脈などの高地を形成しています。この山脈付近は岩盤が弱く、とくに火山活動域の近傍では、少し力が強くなると地震を起こしてしまいます。そして群発地震になります。

 (図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データJMA_PDEを使用)

参考文献:

解説情報 2020年4月上高地の群発地震 について(1) , (2)  2020.4.30

 

 

 

2020年4月30日

2020年4月上高地の群発地震 について(1)

 

                    佃 為成

 

長野県中部、上高地付近で2020年4月23日のM5.5, M5.0の地震を主震とする群発地震が発生しました。

震源の密集域(クラスター)はだいたい4カ所で、過去の活動域と重なるものと長い間震源の空白域だった領域に発生したものがあります。

 

日本アルプス、飛騨山脈に沿った地域は、度々群発地震が発生しています。気象庁の震源データが整理されている1923年1月14日以降の主なものは、1963年2~3月、1969年8~9月、1998年8月、2011年3月、2018年11月、2019年2月です。今回のようなM5.0以上の地震は1998年(1998.8.16 M5.4)以来の20数年ぶりの出来事です。1998年の主要活動域とのその南の地域が今回の活動の舞台です。

 

特筆すべきは、2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(M9.0)の発生直後の穂高岳付近や立山の南の地域の活動です。東北の超巨大地震に呼応した活動です。例えば、M9.0地震の約10分後に穂高岳付近でM4.7が発生しました。

 

上の2枚の飛騨山脈地域の震央分布図は、左が2020年3月31日以前、右が4月1日以降の期間のものです。それぞれの震央分布図で示した地震の時系列を下のM-T図(マグニチュード – 時間)に落としました。各地震の発生時刻にその規模(M)を縦の棒線で示しています。1990年以降、2020年3月以前はM2.0以上、4月はM1.0以上の地震をプロットしました。

 

 (図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データJMA_PDEを使用)

    

 

       2020.4.30

2020年4月上高地の群発地震 について(2)

 

                 佃 為成

 

2020年4月、上高地付近でM5.5, M5.0の地震を主震とする群発地震が発生しましたが、その震源は、だいたい4カ所の震源密集域(クラスター)を形作っています。以下はそのことについての解説です。

上図は、震央分布図です。クラスターA、B、Cは、以前活動が低レベルだったところ(地震空白域)で発生しました。一方、Dはだいたい1998年の活動域の中央部に位置しています。しかし、本震M5.0の震源はBと同じ空白域にあります。この群発地震の報告の(1)(参考文献)の震央図と見比べてご覧下さい。

 

なお、震源の深さは大方10kmより浅いです。気象庁の震源リストによるとM5.5の震源の深さは3km、M5.0は5kmです。

 

さて、震源とは地震による岩盤破壊の出発点の場所のことです。Bの本震(M5.5)は東西に伸びるクラスターの東部に位置しています。この場合は、破壊は主に西へ向けて進んだと考えられます。また、DのM5.0の地震は、北北西の方向に破壊が進行し、余震によってクラスターDをつくったことになります。これら主要な地震がつくった断層(震源断層)は横ずれ断層です。この垂直面をもつ断層は、外部から水平方向の強い力を受けているところで生成されます。

 

下はクラスター毎の時系列をM-T図で表現しました。各地震の発生時刻にその規模(M)を縦の棒線で示しています。最初にクラスターAが活動し、次に南のB、C、そしてDが続きます。

 

考察中の地域では、1ヶ月弱の期間にM1.0以上の地震が約1,000回発生しましたが、M0.0以上とすると、約4,000回になります。このように、多数の地震が集中的に発生しているのです。

 

 (図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データJMA_PDEを使用)

 

参考文献:解説情報 2020年4月上高地の群発地震 について(1)  2020.4.30

 

 

 

解説情報 長野県南部の地震                          2017.7.15

                  

       上久保廣信

 

2017年6月25日7時2分頃地震がありました。 震源は長野県南部(北緯 35.9度、東経137.6度、深さ約10km)で地震規模は5.6です。震源に近い王滝村木曽町では震度5強の大きな揺れを感じました。

 

この地震は、1984年に発生した長野県西部地震(M6.8)の震源域付近で発生したものです。この地域は1926年から現在にかけて、グラフの傾きが急になってきていることから微小地震の発生が次第に活発化してきた経過がわかります。

(地震積算回数のグラフ上:1926年からのマグニチュード3.5以上)

 

また、近年では、1998年と2010年と2014年に一段と地震が活発化したことがわかります。そして、地震が活発化してから、次に活発化するまでの周期が次第に短くなってきていることも見てとれます。

(地震積算回数のグラフ下:1998年からのマグニチュード3.0以上)

 

 

この地域では、長年にわたり東西から地盤を圧縮する力がはたらき続けており、周期的に内陸型地震を繰り返します。そうした地震の特徴に注意して、注意深く観察を続けることができれば、地下の異常な事態を予測することができます。

今回の有感地震直前までの地震活動を気象庁一元化地震データにTSEIS(地震研究所)を適用して可視化しました。 

 

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