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                              2022.5.7京都府・大阪府境界,京都府亀岡市付近の地震     

 

                伊藤 潔

 

 

約4年前の地震の余震が収まったと思ったら,最近よく揺れるので調べてみました。

図1に大阪-京都府境付近のM2以上,深さ25km以浅の地震の震央分布を示します。1997年10月以降の気象庁によるデータです。

 

最近約2年間の地震を赤で示してあります。また,1919年以降のM5以上の地震を白丸で重ねています。

 

大阪北部から北側の丹波山地は地震が多いことが知られていますが,M5以上の地震は少く,M3-4以下の小さな地震があちこちで群発しています。

 

2018年6月の大阪北部の地震(M6)以降丹波山地の北北西へのやや大きめの地震活動の広がりが見られましたが,最近の地震活動はその一端と思われます。

 

図2には図1の矩形の範囲の地震の数の変化を示しますが,2018年から約1年間この地域の地震も増加傾向にありました。

 

図3には小領域の震央分布を示します。京都府亀岡市付近の分布図になります。昨年10月に図3の北東で群発的な地震が起こりました。今年の4月に平野の中央付近で活動が活発化して現在に至っています。

 

この地域では1987年にM5.0の地震(図3黒丸)が起きていて,これが最大ですが,最近の最大地震はM4.4です。今回の活動も通常のやや活発な活動の一つと見ることもできます。しかし,この地域は日本でも活断層の密度が最も高い地域の一つで,過去に多くの大地震が起きたことを示しています。

 

また,京都市の歴史的な大地震は1830年以降発生していません。これまで大地震は丹波山地の地震多発地域の周囲で起きていることもあり,周囲も含めて広域での注意が必要です。

 

 

 

2021.5.10

2018年大阪北部の地震とその後の地震活動

 

                         伊藤 潔

 

 2018年6月18日の大阪北部におけるM6.1の地震後の活動について報告します。この地震は中規模ながら,都市域で発生したため,最大震度6弱にもかかわらず,死者が6名でブロック塀の倒壊で小学生が亡くなったことが問題になりました。また,6万戸以上の家屋が損壊しました。

 

この地震はメカニズムが複雑で気象庁は当初主圧力軸の方向だけを発表しました。それは型が異なる2つの破壊が重なって本震を構成していたためです。これに伴い,図に見られるように,余震域も2つの方向に拡がっています。一つは有馬高槻構造線(図の本震の北側を東北東-西南西に延びる断層帯,ATTL)に沿う方向,もう一つはそれにほぼ直交する北西―南東方向の並びです。後者はATTLを切っているように見えますし,淀川の付近まで達しており,生駒山地につながるように見えます。これらは活断層と地震の関係を考えるのに重要だと考えます。

 

図は同数の地震を時間順にプロットしたものです。余震はこの2つの方向を拡張するように延びていったのが分かります。余震分布の変化と地帯構造の関連が興味深いものです。

 

最近でも有感地震が時々発生しますが,本震の近くでは地震が少なくなっているようです。近畿中北部ではATTLの北側のみで通常地震が発生しており,この地震はいわゆる空白域での地震でした。地震空白域での発生と地帯構造などとの関連も面白そうです。また,いつこれらの活動が収まるか,別の地震が起きるかなど今後の課題です。

 

図 気象庁地震月報と一元化震源化震源により,震央分布を示します。各図には下記の期間ごとに,それぞれ1492個の地震がプロットされています。各図の期間と日数は下記の通りです。地震の深さは20km以浅,マグニチュードは-0.9~6.4で,M6クラス1個,M4クラス3個,M3クラス24個で,図ごとに大きい地震が前面にくるようにしました。×は本震の位置,赤い線は活断層(産総研による),黒線は大阪府と京都府の境界,青線は淀川を示します。

 

A,2018-06-18 03:07:23~2018-06-21 06:17:14,  3.131840日

 

B,2018-06-21 06:40:34~2018-07-04 20:49:13, 13.589340日

 

C,2018-07-04 20:54:04~2018-08-14 00:17:35, 40.141331日

 

D,2018-08-14 01:15:22~2018-11-19 14:51:30, 97.566759日

 

E,2018-11-19 15:01:27~2019-07-13 03:46:37,235.531366日

 

F,2019-07-13 05:06:55~2021-04-26 23:54:06,653.782766日

 2018.7.1

2018年大阪府北部の地震の意味

 

                         佃 為成

 

1995年兵庫県南部地震(M7.3)の後、2002~2003年ごろから近畿地方北部一帯では、地盤の歪みや微小地震活動の変化、地下水温変化、井戸水の濁り現象や、琵琶湖底でのガスなどの噴出現象など、さまざまな地下からのサインが報告されてきました。

兵庫県猪名川町での水温データは、2016年ごろから異常な上昇変化を示していました。そして、2018年6月18日に大阪府北部の地震(M6.1)が発生したわけです。

 

兵庫県南部地震後の約23年間に周辺で発生した目立つ地震は、この地震の震源域の西隣の2013年淡路島地震(M6.3)と、今回の東隣の大阪府北部の地震(M6.1)です。最近のこれらの地震は、六甲・淡路島断層帯で発生した兵庫県南部地震断層の横ずれの延長ではなく、割れた方向は、ほぼそれに直交し、逆断層(縦ずれ)の断層も含まれています。

大阪府北部の地震は、有馬-高槻断層帯の近傍に位置しますが、上町断層の傾斜した深部に位置する可能性があります。

 

さて、上述の様々の地下の動きを理解するために基本かつ必須の情報は、「新潟-神戸歪み集中帯」についてです。

GPS観測が始まって、新潟と神戸を結ぶ線(帯)を境に、地面の動きが急変していることが判明しました。この一帯では岩盤が大きく歪んでいるのです。縮みやねじれが大きいのです。この情報は近年の観測成果ですが、おそらくずいぶん昔から続いていると思われます。歴史地震もこの一帯に頻発していますし、これに沿った活断層帯が発達しています。近年でも、2004年新潟県中越地震(M6.8)、2007年新潟県中越沖地震(M6.8)、2011年長野県北部(栄村)の地震(M6.7)、2014年長野県北部(白馬村)の地震(M6.7)がこの一帯で発生しています。

今度の2018年大阪府北部の地震(M6.1)もそうです。

 

さらに、南海トラフの超巨大地震の準備が進行していることも考慮する必要があります。海溝型巨大地震前の数10年間、その後の数10年間にプレートの上盤の内陸部で大地震が頻発することが歴史上知られています。

近年、西日本では、1995年兵庫県南部地震(M7.3)、2000年鳥取県西部地震(M7.3)、2005年福岡県西方沖地震(M7.0)、2016年熊本地震(M7.3)といったM7クラスの地震が発生していますが、今後、今回の大阪府北部の地震のようなM6クラスの地震も多発するでしょう。

 

(図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用)

 

 

 

 

2018年大阪府北部の地震の意味(2)

~5年前からの前震活動について~

 

                         佃 為成

 

2018年6月18日に大阪府北部の地震(M6.1)が発生した場所は、有馬-高槻断層帯のごく近く(南側)でした。この断層帯の北側では微小地震活動が活発ですが、反対に南側は地震活動が極めて低調です。今度の地震はこの地震空白域で発生しました。

 

また、六甲・淡路島断層帯で発生した1995年兵庫県南部地震(M7.3)の地震断層の横ずれの延長ではなく、本震の一部や余震の中には、その割れた方向が、六甲・淡路島断層帯や併走する有馬-高槻断層帯に直交する逆断層(縦ずれ)の断層も含まれています。大阪府北部の地震は、有馬-高槻断層帯の近傍に位置しますが、上町断層の傾斜した深部に位置する可能性があります。

有馬-高槻断層は横ずれ断層で、断層はほぼ鉛直面になりますが、上町断層は逆断層で、断層面は傾斜しており地下深部では断層の地表のトレースより東側に存在します。今度の地震の震源域(深さ10~15km)がこの上町断層に位置するかもしれません。

 低活動域の中でも、よく見ると地震の群を見いだすことができます。図の A と B に注目してみます。地震活動を見るのに積算地震回数のグラフのほかに、M-T図というのがあります。横軸は地震の発生時間、縦軸は発生した地震のマグニチュードMを棒グラフで示したものです。領域 A と B の M-T図を見ます。A はいわば定常的に発生しています。ところが、今度の地震の余震域の中に位置する B の活動は近年の2013年からしか現れていません。図は2000年以降のデータを示しています。過去のデータは検知率が低いので、同等には比較できませんが、この B のところには1923年以来地震が1回も検出されていません。つまり、この地震の巣は比較的最近に生成されたと言えます。今度の地震のタネを造ったのかもしれません。

 Bの地震群の最後の地震は、2018年2月15日でした。直前の前震はなかったのです。

(図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用。震央分布図の点線で囲んだ部分は大阪府北部の地震の余震域。スターは本震の位置)

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図2 図1の小地域内の地震のM-T分布

図2 図1小地域の震央分布

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図3 京都・大阪府境界付近の震央分布

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