2024.5.22
近畿地方の観測情報
佃 為成
淡路島から京都、琵琶湖に至る地域では、様々な「地下からのサイン」が見つかっています。2002~2003年頃から微小地震活動低下や京都大学の地殻変動観測所の歪み計のデータ変化、東京大学の地下水観測点での水温の上昇変化や下降変化が始まっています。2007年頃には京都府の亀岡では地下水が濁る異常現象があり、2009年からは琵琶湖環境科学研究センターの潜水ロボットが湖底で土砂噴出を見つけました。
1995年阪神淡路大震災の後、地震の前や後に現れた異常現象を詳しく研究するために東京大学で行われていた水温などの観測を、現在、「測ろうかい」が引き継いでいます。その中でいくつかの観測点のデータを紹介します。水温観測点の位置を地図に示します。
水温のグラフのトップは兵庫県猪名川町柏原の井戸(KW)の水温です。2001年から一時的な停滞はあるものの上昇を続けています。2014年からは、それまでの精密水晶温度計に代わり、白金抵抗体水温計で計測しています。2016年7月頃より上昇顕著。2018.11.18にセンサー交換。2021年12月に原因不明の異常上昇。最近は下降傾向。
2番目のグラフ、京都府亀岡市馬路の井戸(TMG)の水温も2002年からの上昇は2008年頃止まり、その後はほぼ一定。次の兵庫県西宮市武田尾の温泉(TKP)は2003年頃より下降してきましたが、2015年から観測できなくなりました。淡路島ぬる湯温泉(NR)の水温は下降していたのが、2013年以降、上昇(0.035℃/年)に転じ、2017年末からは下降へ。
2018.6.18の大阪府北部の地震(M6.1)後、水温がさらに降下。その後、急上昇(機器の問題か)。その後記録計がダウン。2020.3.12に再セット。最近水温急上昇。
各地の水温等に地下からのサインが見えます。琵琶湖から淡路島にかけての一帯で、大地震の準備が進行している可能性があります(最大M8)。
水温のグラフ(データは2024年5月中旬まで): KW の精密水晶温度計故障。今は代わりの水温計。各観測点、季節変化除去。亀岡(TMG)の2022年春からの異常は直下群発地震の影響(コラボNo.8,pp.105-106)。TKP では大規模土木工事のため観測を停止しました。
2024.5.22
近畿地方の観測情報(補足と追加データ)
佃 為成
[観測点分布]近畿地方の地下水観測点。主に水温観測。
猪名川町原(UE)では水温とともに水位も観測しています。
[猪名川町原(UE) 水位及び水温データ] 2017.10.31以降機器異常で欠測。2018.7.27より新しい機器で観測再開。但し、新水位計は2020.7.31より正常観測。水温計はセンサー不調で観測中断(2022.11.17-2023.5.18)。
UEの水位と水温は、前後それぞれ半年間,全1年間の平均値をとっています。水位の下降は、2014年ごろから上昇へ転じたように見えましたが、最近は元に戻り、やや下降ぎみ。一方、水温は、最近上昇へ。
[亀岡市塩屋町,京都市錦天満宮,大津市瀬田の水温データ (~2024年5月中旬)]
亀岡市塩屋町(KK)の互いに10mほど離れた2カ所の井戸(A),(B)とも水温は長期的に下降していました(A:-0.065℃/年, B:-0.16℃/年)が、2015年ごろから上昇へ。
最近は下降。京都市新京極の錦天満宮(NT)の水温は深さ60mの井戸から汲み上げられた水を手水舎の貯水槽にて測定しています。水温の季節変化を除去しています。NTはやや上昇後、2016年頃からほぼ一定。最近ポンプモーター故障で測定値が乱れています。
大津市瀬田(ST)の井戸は地元ではエンコと呼ばれている自噴井です。なお、STは まだ季節変化を除去せず。長期トレンドはほぼ一定でしたが、この1~2年は上昇・下降の変動。