解説情報「2016年8月20日三陸はるか沖地震M6.4について」
2016.9.1
高波 鐵夫
前報の6月21日の内浦湾南茅部町川汲沖に発生した群発地震に続いて、三陸はるか沖で8月20日から21日にかけて、M5.3(14:14), M4.9(14:16), M6.4(18:01), M6.2(00:58), M5.5(01:19), M5.3(01:28)の地震が続発し、余震も多数伴いました. そこで2016年1月1日から約8ヶ月間に北海道南部から東北地方北部域で発生したM1以上の地震の時間積算グラフ(図1)と震央分布(図2)から6月21日の川汲沖地震と今回の地震の地震活動とが際立って余震を多く伴っていたのが理解できました.
そこで、今回の三陸はるか沖地震群(図2のハッチ内)について、さらに地震前後の約27日間のごく最近に限って図示したのが図3と図4です.図3は、図4で示した水平面、及び南北、東西の垂直面に投影された震源の時間積算グラフです.図4からは多くの地震が10km〜20kmの浅い深さで発生していたのが分かります.しかも8月20日に発生した最大地震(M6.4)は正断層タイプでなく、低角逆断層タイプの地震メカニズムでした.
さて、過去に当該海域で発生した大きな地震として、1994年12月28日の三陸はるか沖地震(M7.6)があります.今回の震源域を含むほぼ北緯39度〜41度、東経142度〜144.5度の広範囲で余震が多数発生しました.さらにこの地震の北西方向側約40km付近で、1968年5月16日に十勝沖地震(M7.9)が発生しました.因みにこの三陸はるか沖地震のわずか約20日後の1995年1月17日に阪神淡路大震災を引き越した兵庫県南部地震(M7.3)、続いて4ヶ月後の1995年5月28日にはロシア、サハリン州北部のネフチェゴルスク市を壊滅状態にしたサハリン北部地震(Mw7.0)も発生しました.地震学者にとって大変忙しい年でした.
ところで2011年太平洋東北沖地震(M9)の余震分布に対するG-R則から推して8M程度の余震発生ポテンシャルはまだ依然として高いと言わざるをえません.しかし近未来の大きな余震発生の場所と時刻とを高い精度で予測するのはまだ〜難しいと思います.今回のような海溝沿いで発生した群発性地震の推移も含め、まだ〜日本海構沿いの地震活動を注意深く監視していくことが重要だと思っています.
謝辞 地震活動の可視化には地震研究所の地震活動監視システムを利用しました.また地震情報は気象庁一元化地震カタログを引用しました.
図1 図2にプロットされた地震の時間積算グラフ
2016/6/21川汲沖地震
2016/8/20三陸はるか沖地震
三陸はるか沖地震
図2 2016年1月1日〜2016年8月27日に発生した深さ40km以浅、M1以上の地震の震央分布.
2016/8/20三陸はるか沖地震
図3 図4にプロットされた地震の時間積算グラフ.
図4 2016年8月1日〜8月27日に発生した深さ40km以浅、M1以上の地震の3次元投影図.