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2026.7.7

 

2025年11月9日三陸沖地震 (M6.9) 後の

高い地震活動について

 

                  高波 鐵夫

 

 

2005年11月9日17時03分に三陸沖の深さ約15kmでM6.9の地震が発生しました。この地震を契機に、三陸沖では今もなお大きな地震が頻発しています。

 

すでに、この地震については、気象庁の地震カタログに基づいて解説してきましたが、ここでは、防災科学技術研究所(NIED)が公開している、「気象庁一元化地震処理データ」(注、気象庁や大学、防災科学技術研究所などの各機関がそれぞれ観測した地震データを、気象庁がリアルタイムで収集し、同一の基準で処理・解析した全国共通の地震データ)に基づいて、ごく最近の2026年7月4日までの地震活動を概説します。

 

まず、第1図にはM4.5以上の比較的大きな地震の震央分布を示します。その分布の東端には、同程度の大きさの地震群を伴った2025年11月9日地震M6.9と2026年3月26日地震M6.7とが隣り合って起こっています。これらは「双子地震」と見做せます。双子地震の後者の発生からわずか25日後に、最大地震M7.7が北方約60km離れた場所で発生しました。 

 

 

これらの顕著な3つの地震が取り囲む領域内では大きい地震が周辺よりも頻発しています。

 

この震央分布に関連した地震活動の規模別時間変化は、第2図のM-Tダイアグラムで示しました。これは個々の地震の発生時刻に沿って並べたものですが、地震の規模Mに対応した丸つきの縦線で表しています。これで地震活動の規模別時間変化が容易に理解できます。これから、2025年11月9日に発生した地震M6.9以来、この海域での地震活動が高くなったと云えます。またこの地震の発生に伴って比較的大きな地震の発生頻度も高くなっています。これから推して地震のb-値(注、地震の発生頻度は規模Mとともに指数関数的に減少するというG-R関係式の傾きを指します)の減少もあったことが推察されます。

 

以上、最近の三陸沖の高い地震活動を概観しました。そのための調査資料として、気象庁一元化地震処理データとSeis-PCの出力図を変更しながら使用しました。なお使った地震資料は暫定的であり、将来変更されることがあります。

 

 

第1図.三陸沖で最近発生したM4.5以上の震央分布

 

 

第2図.三陸沖で発生した地震M1.0以上のM-Tダイヤグラム

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 2026.04.25

 

2026年4月20日三陸沖地震M7.7とその周辺環境

 

                髙波 鐵夫

    

 

三陸沖では、2025年11月9日三陸沖地震M6.9、その約1月後の12月8日八戸沖地震M7.5が続発しました。

 

さらに前者の近傍で、2026年4月20日に三陸沖地震M7.7の地震が発生しました(第1図)。

 

これらの地震は巨大地震の想定震源域内に起こったため、大きな後発地震発生の可能性が相対的に高まったとして、気象庁と内閣府から「北海道・三陸後発地震注意情報」が出されました。

 

 

 

 

第1図.2025年11月1日から2026年4月20日までに発生した地震の震央分布

 

 

 

ここでは、それぞれの発生パターンを紹介し、想定されている地震との関係性を考察します。

 

第1図にはM6以上の地震の震央を○で、M5以下の地震は小さな黒点で示しています。

第2図には、第1図のA―Bに沿った東西断面に投影した震源を示しています。用いた震源情報は暫定的ではあるものの、震源分布から推して、これら3つの地震は、スラブ上面の海溝型地震と云えます。ただその発生パターンに明瞭な違いがあります。

 

11月9日に発生したM6.9の地震は、複雑な一連の地震活動の一部であり、1週間にわたって発生した連鎖的な前震から繋がっています。

一方、12月に発生した地震は、前者の地震から北西200kmの八戸沖にあり、前震活動は確認されていません。12月の地震は、11月の地震に比べて約10倍のエネルギーを放出した大きな地震でした。

 

直近の4月20日の地震M7.7も明瞭な前震活動は確認されません。この地震も11月の地震にくらべて約17倍の大きなエネルギーを放出しました。

 

さらに11月9日の地震は、1992年7月18日の超スロースリップ地震域(Kawasaki et al.1995, https://doi.org/10.4294/jpe1952.43.105)と重なっています。それ以来、この震源域では、「繰り返し地震」や「地殻変動による微動」などが観測されています。それとは対照的に、2025年12月のM7.5と2026年4月のM7.7の地震はより標準的なスティックスリップ挙動を示しました。

 

これらの発生パターンから将来の大地震について、どれほど明確な情報を提供してくれたのか、まだ明確に理解していません。これからも発生パターンの知識をゆっくりと蓄積していくしかないのです。

 

謝辞.地震情報は気象庁地震カタログを、可視化にはSeis-PC(中村・石川, 2005)を利用しました。 また友人の川崎一郎氏と浅井康宏氏からは有益な情報を受けました。

2025.12.17

2025年12月8日八戸沖地震M7.5とその余震分布

 

                 髙波 鐵夫

     

前報で解説した11月9日三陸沖地震M6.9に誘発されたように、約1月後の12月8日にM7.5の比較的大きな地震が八戸沖で発生しました。

 

第1図のマップには11月1日から12月12日の期間に発生したM3以上の地震の震央を○で示してあります。とくに今回の余震を四角い枠で囲ってあります。

 

その枠内のAB線に沿った鉛直断面に投影した震源分布は第2図に示されています。

 

その南側の海溝沿いに11月8日三陸沖地震M6.9の震源域が明示されています。さらに陸側寄りには、ほぼ南北に広がった震央分布が見て取れます。

多くの地震はプレート境界に沿って発生し、最大余震M6.9近傍のクラスターはプレート境界上側であり、境界に並行して分布しているのが見て取れる。

 

第3図には地震発生数の積算値を示してあります。この図から、3つのM7程度の大地震発生に伴ってその数が急増し、その傾向は、調査最終日の12月12日時点でも変わっていないのが見て取れます。しばらくの監視は続きそうです。


謝辞:本稿で使用した地震データは防災科研「気象庁一元化地震サイト」を、作図には、GMT6(Wessel ほか,2019)Seis-PC (中村・石川2005)を用いました。

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第1図.2025年11月1日〜12月12日に発生した地震の震央分布 

四角い太線枠内で、12月8日八戸沖地震M7.6が発生し、その後、4日間で4つのM6以上の大きなプレート境界地震を伴った。三陸沖のクラスターは11月9日三陸沖地震M6.7の震源域である。 

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第2図. 第1図中の四角枠内のAB線の鉛直断面に投影した震源位置の東西断面

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第3図.M1.5以上の地震の時間積算数

第1図の領域内で発生した地震のマグニチュードがM1.5以上の地震発生数を2025年11月1日からの経過時間で積算した数である。

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2025.11.28

2025年11月9日三陸沖地震M6.9の背景(続き)

---- 本震直前に活発化した前震活動 ----

 

 

      髙波 鐵夫

 

  

2025年11月9日に三陸沖で発生した地震(M6.9)は、前報(高波、2025.11.24)でも述べたように、本震の約1週間前となる11月3日に M5.2 の前震が発生し、それ以後小規模な地震が続発的に発生した点が特徴的である。

 

特に本震前日の11月8日には M4.5〜4.9 の地震が4回続き、その後 M5.3、M5.4、M5.6 と地震が立て続きに起きた。

 

本震前の地震活動度の時間変化を把握するため、防災科研サイトに公開されている暫定的な地震情報を用い、 M0以上の地震発生数の積算値を第1図に示した。

 

図から、11月8日以降に地震発生率が急増している様子が読み取れる。

 

 

続いて、第1図で扱った期間の地震の震央分布を第2図に示す。

 

個々の震央位置を明瞭に表示するため、地震規模に依らず、ほぼ同一サイズのマーカーでプロットした。さらに、その外側の海溝寄りにはM0以上の地震が発生しない領域(地震空白域)が認められ、その陸側に複数の高い地震活動域が隣接して存在していた点も注目される。

 

こうした空白域と高活動域の配置は、本震発生域の力学的背景を示唆する可能性がある。

​謝辞:本稿で使用した地震データは防災科研「気象庁一元化地震サイト」を用いた。

 

作図には、Seis-PC(石川,1985)、GMT6(Wessel ほか,2019)を用い、海溝軸データには PLMDL_2016(岩崎,2016)を使用した。

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.11. 24

 

2025年11月9日三陸沖地震M6.9の背景

---- 本震前の地震活動 ----

 

             

               髙波 鐵夫

  

 

2025年11月9日に三陸沖で発生した地震(M6.9)は、この海域で同規模の地震が起きたのは約33年ぶりである。

 

気象庁によれば、震源は深さ16km付近のプレート境界で、西北西—東南東方向に圧力軸をもつ逆断層型地震と推定される。

 

本震の約1週間前の11月3日に M5.2 の前震が起き、以後小規模地震が連続した。特に本震前日の11月8日には M4.5〜4.9 の地震が4回続き、その後 M5.3、M5.4、M5.6 と地震が相次いだ。

 

今回の M6.9 は M5.6 の約10時間後に発生している。また、2023年8月には本震震源の北東側で M6.0 が発生しており、この海域の活動の連続性を示している。

 

歴史的にもこの海域は、1つの大きな地震を契機として同程度か、あるいはそれ以上の規模の地震が続発しやすい傾向がある。

 

1923年には M6.1 の2.3日後に M5.8 と2つの M6.9、さらに 2.4日後に M6.4 が発生している事例がその典型である。

 

ただし、今回の活動が今後さらに発展するのか、すでに収束へ向かっているのかを判定することは現時点では困難であり、継続的な観測が必要である。

 

地震活動の広域的な状況を把握するため、2000年以降の千島海溝〜日本海溝沿いでの M5 以上の震源分布を作成した。

 

中心付近の波線枠内には、今回の震源とその周辺の頻発域が含まれており、この領域は過去にも活動が活発化した例を持つ。

 

また、南側には 2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)、北側には 2003年十勝沖地震(M8.0)の震央が位置しており、本震の震源域はこれら大地震の間に挟まれた領域に相当する。

 

今回の活動は周辺の大規模地震との位置関係から見ても注視すべきものであり、今後も多様な観測情報を踏まえて状況を継続的に監視したい。

 

謝辞:震源データは気象庁震源カタログ、作図には Seis-PC(石川,1985)、GMT6(Wessel ほか,2019)を用い、海溝軸データには PLMDL_2016(岩崎,2016)を使用した。

 

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第1図. 2025年11月1日から本震直前までの地震数(積算値)

8日から地震増加率が大きく変化。これらの震央分布は第2図。

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第2図. 2025年9日三陸沖地震M6.9発生前(11.1〜本震)の震央分布。中心部の赤い×印は本震の震央。

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