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2025.11.28

2025年11月9日三陸沖地震M6.9の背景(続き)

---- 本震直前に活発化した前震活動 ----

 

 

      髙波 鐵夫

 

  

2025年11月9日に三陸沖で発生した地震(M6.9)は、前報(高波、2025.11.24)でも述べたように、本震の約1週間前となる11月3日に M5.2 の前震が発生し、それ以後小規模な地震が続発的に発生した点が特徴的である。

 

特に本震前日の11月8日には M4.5〜4.9 の地震が4回続き、その後 M5.3、M5.4、M5.6 と地震が立て続きに起きた。

 

本震前の地震活動度の時間変化を把握するため、防災科研サイトに公開されている暫定的な地震情報を用い、 M0以上の地震発生数の積算値を第1図に示した。

 

図から、11月8日以降に地震発生率が急増している様子が読み取れる。

 

 

続いて、第1図で扱った期間の地震の震央分布を第2図に示す。

 

個々の震央位置を明瞭に表示するため、地震規模に依らず、ほぼ同一サイズのマーカーでプロットした。さらに、その外側の海溝寄りにはM0以上の地震が発生しない領域(地震空白域)が認められ、その陸側に複数の高い地震活動域が隣接して存在していた点も注目される。

 

こうした空白域と高活動域の配置は、本震発生域の力学的背景を示唆する可能性がある。

​謝辞:本稿で使用した地震データは防災科研「気象庁一元化地震サイト」を用いた。

 

作図には、Seis-PC(石川,1985)、GMT6(Wessel ほか,2019)を用い、海溝軸データには PLMDL_2016(岩崎,2016)を使用した。

 

 

 

 

 

 

 

 

2025.11. 24

 

2025年11月9日三陸沖地震M6.9の背景

---- 本震前の地震活動 ----

 

             

               髙波 鐵夫

  

 

2025年11月9日に三陸沖で発生した地震(M6.9)は、この海域で同規模の地震が起きたのは約33年ぶりである。

 

気象庁によれば、震源は深さ16km付近のプレート境界で、西北西—東南東方向に圧力軸をもつ逆断層型地震と推定される。

 

本震の約1週間前の11月3日に M5.2 の前震が起き、以後小規模地震が連続した。特に本震前日の11月8日には M4.5〜4.9 の地震が4回続き、その後 M5.3、M5.4、M5.6 と地震が相次いだ。

 

今回の M6.9 は M5.6 の約10時間後に発生している。また、2023年8月には本震震源の北東側で M6.0 が発生しており、この海域の活動の連続性を示している。

 

歴史的にもこの海域は、1つの大きな地震を契機として同程度か、あるいはそれ以上の規模の地震が続発しやすい傾向がある。

 

1923年には M6.1 の2.3日後に M5.8 と2つの M6.9、さらに 2.4日後に M6.4 が発生している事例がその典型である。

 

ただし、今回の活動が今後さらに発展するのか、すでに収束へ向かっているのかを判定することは現時点では困難であり、継続的な観測が必要である。

 

地震活動の広域的な状況を把握するため、2000年以降の千島海溝〜日本海溝沿いでの M5 以上の震源分布を作成した。

 

中心付近の波線枠内には、今回の震源とその周辺の頻発域が含まれており、この領域は過去にも活動が活発化した例を持つ。

 

また、南側には 2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)、北側には 2003年十勝沖地震(M8.0)の震央が位置しており、本震の震源域はこれら大地震の間に挟まれた領域に相当する。

 

今回の活動は周辺の大規模地震との位置関係から見ても注視すべきものであり、今後も多様な観測情報を踏まえて状況を継続的に監視したい。

 

謝辞:震源データは気象庁震源カタログ、作図には Seis-PC(石川,1985)、GMT6(Wessel ほか,2019)を用い、海溝軸データには PLMDL_2016(岩崎,2016)を使用した。

2016.9.1

解説情報「2016年8月20日三陸はるか沖地震M6.4について」

                  高波 鐵夫

 

 前報の6月21日の内浦湾南茅部町川汲沖に発生した群発地震に続いて、三陸はるか沖で8月20日から21日にかけて、M5.3(14:14), M4.9(14:16), M6.4(18:01), M6.2(00:58), M5.5(01:19), M5.3(01:28)の地震が続発し、余震も多数伴いました.

 

そこで2016年1月1日から約8ヶ月間に北海道南部から東北地方北部域で発生したM1以上の地震の時間積算グラフ(図1)と震央分布(図2)から6月21日の川汲沖地震と今回の地震の地震活動とが際立って余震を多く伴っていたのが理解できました.

 

そこで、今回の三陸はるか沖地震群(図2のハッチ内)について、さらに地震前後の約27日間のごく最近に限って図示したのが図3と図4です.図3は、図4で示した水平面、及び南北、東西の垂直面に投影された震源の時間積算グラフです.

 

図4からは多くの地震が10km〜20kmの浅い深さで発生していたのが分かります.しかも8月20日に発生した最大地震(M6.4)は正断層タイプでなく、低角逆断層タイプの地震メカニズムでした. 

 

さて、過去に当該海域で発生した大きな地震として、1994年12月28日の三陸はるか沖地震(M7.6)があります.今回の震源域を含むほぼ北緯39度〜41度、東経142度〜144.5度の広範囲で余震が多数発生しました.さらにこの地震の北西方向側約40km付近で、1968年5月16日に十勝沖地震(M7.9)が発生しました.

 

因みにこの三陸はるか沖地震のわずか約20日後の1995年1月17日に阪神淡路大震災を引き越した兵庫県南部地震(M7.3)、続いて4ヶ月後の1995年5月28日にはロシア、サハリン州北部のネフチェゴルスク市を壊滅状態にしたサハリン北部地震(Mw7.0)も発生しました.地震学者にとって大変忙しい年でした.

 

 

ところで2011年太平洋東北沖地震(M9)の余震分布に対するG-R則から推して8M程度の余震発生ポテンシャルはまだ依然として高いと言わざるをえません.しかし近未来の大きな余震発生の場所と時刻とを高い精度で予測するのはまだ〜難しいと思います.今回のような海溝沿いで発生した群発性地震の推移も含め、まだ〜日本海構沿いの地震活動を注意深く監視していくことが重要だと思っています.

 

謝辞 地震活動の可視化には地震研究所の地震活動監視システムを利用しました.また地震情報は気象庁一元化地震カタログを引用しました.

 

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第1図. 2025年11月1日から本震直前までの地震数(積算値)

8日から地震増加率が大きく変化。これらの震央分布は第2図。

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第2図. 2025年9日三陸沖地震M6.9発生前(11.1〜本震)の震央分布。中心部の赤い×印は本震の震央。

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図1 

図2 2016年1月1日〜2016年8月27日に発生した深さ40km以浅、M1以上の地震の震央分布.

図3 図4にプロットされた地震の時間積算グラフ.

図4 2016年8月1日〜8月27日に発生した深さ40km以浅、M1以上の地震の3次元投影図.

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