地下からのサイン
地震予知観測の基本は、岩盤の動きをとらえる地殻変動と微小地震観測だ。
岩盤の動きだけでなく、その間隙に潜む流体(水やガス)の動きも地下からのサインを出す。
この情報を活用しない手はない。
深部流体は熱い。地表付近まで熱を運ぶ。
浅い井戸の冷たい水に下から熱い水が侵入、水温を上げる。
大量の熱水が広範囲に上昇すると、地面の岩盤を温める。
地温が上昇する。
地温が上がればその上の空気が温められ上昇し、水蒸気が冷えて小さい水滴になり雲ができる場合もあるかもしれない。
地下の水にミネラルが多い深部の水が浸入すると、水中に電気を帯びた粒子、イオンが増える。
深部の高圧水は地表を突き破って噴き出すかもしれない。
噴き出さないまでも、地表付近の岩や土を持ち上げる、モグラのように。
流体にはガスも含まれる。
臭いのきつい硫化水素のようなガスが噴き出せば、動物はいやがるだろう。
中でも、ラドンガスは特別に注意が必要だ。
ラドンガスは“放射線”を機関銃のように撃ちまくるギャングだ。
空中の空気分子や塵などが放射線の弾を撃ち込まれ、電子などの粒子がはがれたり、はがれた粒子が別の粒子にくっついたりする。
そのとき、電気のやり取りも行われる。それまで電気的に中性だった粒子も電気が減ったり、増えたりして電気を帯びる。
つまり、多数の電気を帯びた粒(イオン)が生成される。
イオンが空中に多くなると、真っ直ぐ飛ぶべき電波が跳ね返されたり、方向を曲げられたりする。
電波の異常伝播だ。
イオンが多い空気は放電し易くなり、発光現象の発生を助ける。
地上や空中の現象で地震に関係がある現象は、地下からのエネルギー(熱や化学エネルギー)や物に由来する。
岩盤の変形を測る地殻変動観測は直接的、微小地震観測による群発地震の検知も直接的。
地下水位の観測は、地殻変動を補うもの。
地下水温や地下水の電気伝導度観測は深部流体の動きをキャッチし、岩盤の変形を間接的にとらえる。
地表の地殻変動観測では、深い所の岩盤の変形をとらえていない場合もあるが、地下水温などの観測によって、深部の情報をつかむことができるかもしれない。
地下で電気が発生するのも、流体の移動によって異種の物質(イオン)が遭遇し、ある種の電池ができたりするのが原因かもしれない。
地上や空中の異常現象は多いが、元はといえば、地下から運ばれた何ものかが悪さをしたものだ。