南海トラフ地震にどのように備えるか
私たちは、南海トラフ地震にどのように備えたらよいのでしょうか。
地震に関する情報をどのように整理して理解していけばよいのかを考えたいと思います。
私たちは、大きな揺れを体験したり、地震災害のようすをニュース等で見聞きしたりするとその度に恐怖を感じたり、地震に備えなくてはと考えたりします。
しかし、その時に考えたことも、3日もすれば、日常の生活に戻り、地震のことはすっかり忘れてしまうこともよくあることです。
地震について少しづつ理解し、大きな災害がどのように近づいているのかを自分自身の力で判断できるようにしていくことが大切です。
では、どんな現象に注意しなければいけないのでしょうか。
気象庁「南海トラフ地震に関連する情報」
気象庁は2017年11月から、異常な現象を観測した場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価した場合等に、「南海トラフ地震に関連する情報」の発表を行うようになりました。
この情報は、南海トラフ全域を対象として、異常な現象を観測した場合や地震発生の可能性が相対的に高まっていると評価した場合に出されます。
どんな現象に注意していけばよいのかがこの情報から判断することができます。
気象庁は調査を開始する基準として具体的に次の例をあげています。
・想定震源域内でマグニチュード7.0以上の地震が発生
南海トラフ地震の想定震源域(中央防災会議、2013)
・想定震源域内でマグニチュード6.0以上の(或いは震度5弱以上を観測した)地震が発生し、ひずみ計で当該地震に対応するステップ状の変化(地震発生時に通常観測される段差的な変化)以外の特異な変化を観測
・1カ所以上のひずみ計で有意な変化を観測し、同時に他の複数の観測点でもそれに関係すると思われる変化を観測している等、ひずみ計で南海トラフ沿いの大規模地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測
・その他、想定震源域内のプレート境界の固着状況の変化を示す可能性のある現象が観測された等、南海トラフ沿いの大規模地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測
注意したい現象
気象庁が例示したものを整理すると注意したい現象は大きく分けると
地震の発生、ひずみ計の変化、想定震源域内のプレート境界の固着状況の変化を示す可能性のある現象であるといえます。
では、それぞれについて詳しく見てみましょう。
地震の発生
地震が発生したときに注意することは、その地震が南海トラフ地震の想定震源域内で発生したものであるのかどうかという点です。そして、その地震の規模がマグニチュード6.0以上の比較的大きな地震であるかということです。
つまり、想定震源域内でマグニチュード6.0規模の大きな地震が発生した際には、南海トラフ地震発生の切迫性が増したと考えることができます。
規模が小さな地震でも注意
震源域内の地震の規模がマグニチュード6.0よりも小さな規模のものでも注意しなくてはいけないケースがあります。
それは、地震のタイプがプレート境界型である場合です。
これは気象庁が例で示した「想定震源域内のプレート境界の固着状況の変化を示す可能性のある現象」となります。
また、同じ場所で繰り返し起きる群発性の地震であったり、より大きな地震の前震と判断されたりした場合も注意が必要です。
ひずみ計の変化
気象庁や静岡県により設置された体積ひずみ計により、岩盤の伸び縮みによる体積の変化を測定しています。
岩盤の動きの監視やゆっくりすべり(スロースリップ)と呼ばれる現象の解析に使用されています。
明瞭な変化が観測されるひずみ計の場所が1か所、2か所、3か所と増えるほど、より切迫性が高まると考えられています。
ゆっくりすべり(スロースリップ)
ゆっくりすべり(スロースリップ)がプレート境界の状態の変化を反映する現象であるため、ゆっくりすべりの動向に注意が必要です。