2018.6.27
房総半島沖の地震活動について(2)
佃 為成
最近、関東の有感地震のうち、千葉県銚子沖の地震はちょっと目立ちます。また、房総半島九十九里浜沖には、ゆれを感じないゆっくりした地震(スロー地震)も2~7年間隔で発生しますが、今年6月に入り2014年以来のスロースリップが発生しました。付近には群発性の有感地震も伴って発生しました。房総半島はるか沖のプレートの三重会合点付近でも群発性の地震が起こります。最近はやや静かです。
房総半島沖のオホーツクプレート、東北日本の部分は、太平洋プレートの潜り込みを受け、フィリピン海プレートにも接し、以下の理由により、M8ぐらいの巨大地震が発生する可能性があります。下の3)を監視して、M8発生の気配を探ることが大事です。
1) 歴史地震(1677年 M8.0)の存在。
2) 2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)の震源域の南に接しており、本震の破壊域を延長する最大級の余震として発生する可能性。
3) 周囲では、スロースリップや群発地震が多発していること。
次に、気象庁のデータが存在する1923年から現在までのこの領域の地震活動を眺めてみましょう。積算地震回数の下の図は、北緯35°より南の領域の地震についてです。
1923年頃の発生率アップは関東地震(M7.9)の影響で、1953年頃、1984年頃、2004年頃、2016年頃の活発化は、領域内では
1953.11.26 M7.4, 1984.9.19 M6.6, 2004.5.30 M6.7, 2016.9.23 M6.7
などの地震が発生した影響でしょう。1953.11.26 M7.4の地震以後、地震発生率がやや小さくなっていました。ところで、2011.3.11 M9.0 の影響は北側の地震活動には現れていますが、南側(三重点付近)はその影響は見えません。
今回の活動図からも、大きな地震の前には周囲の活動低下、地震活動静穏化が起こることが分かります。房総半島沖でM8ぐらいの地震が発生しますと、関東では場所によっては2011年の地震を上回る揺れと、東京湾などには大津波が押し寄せます。
参考資料
佃 為成:3.11超巨大地震のM8余震は起こるか, コラボ No.2, p43.
佃 為成:房総半島沖の地震活動について, 観測情報, 2018.4.26.
(図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用)
2018.4.26
房総半島沖の地震活動について
佃 為成
関東の有感地震のうち、千葉県銚子沖の地震はちょっと目立ちます。房総半島九十九里浜沖には、ゆれを感じないゆっくりした地震(スロー地震)も数年間隔で発生します。房総半島はるか沖でも群発性の地震が起こります(2016.9.8付解説情報、下記参考資料)。相模湾を挟んで伊豆半島付近でも最近地震活動がやや活発化してきたように見えます。関東の海域の地震活動の現状について概観したいと思います。
2000年の三宅島・神津島・新島付近の群発地震(最大地震M6.5)活動が一段落した2001年以降の房総半島沖を中心とした地域の地震活動を眺めてみましょう。海域の地震の検知能力を考えてM3以上の地震をプロットしました。房総SSEと示したところはスロースリップ地震(Slow Slip Event)がよく発生する場所の1つで、北側の群発地震と同期して発生することがあります。
これを3つのブロック(A, B, C)に分けて、時間経過を調べます。活動の時間変化を見る図は、横軸は経過時間、縦軸は地震の回数を積算したもの。時間経過とともに回数が増加します。グラフを部分的に直線にフィットさせて、その直線の傾きを測ると地震発生率(例えば、1日当たりの回数)が分かります。
ブロックAは伊豆半島付近の活動です。今年に入ってやや活発化。ブロックBは、銚子沖です。度々有感地震が発生しますが、東北の2011年超巨大地震(M9.0)後に活発化し、現在の状態もM9.0以前とくらべると発生頻度はやや高いです。ブロックCは、2004-2005年頃や2011年頃、さらに2016年9月にやや活発化しました(参考資料)。2016.9.28にはM6.1の地震がありました。その後は、活発ではありません。
このように数十年の経過を見ると大きな変化は見受けられませんが、細心の注意を傾けて監視すべきだ思います。M8ぐらいの地震が発生しますと、関東では場所によっては2011年の地震を上回る揺れと、東京湾などには大津波が押し寄せます。
参考資料
佃 為成:3.11超巨大地震のM8余震は起こるか, コラボ No.2, p43.
(図の作成は東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データ、JMA_PDEを使用)