2024.4.23
2024年4月17日豊後水道の地震 (M6.6)について
佃 為成
潜り込むフィリピン海プレート内で、2024年4月17日 23:14、豊後水道南部でM6.6, 深さ(h)39kmの地震が発生しました。
愛媛県南部の愛南町、高知県西部の宿毛市で震度VI弱を記録しました。安芸灘、豊後水道から日向灘までの地域の約100年間の震源分布(M>=6.0)を示します。
M7を越える大きな地震は宮崎県沖の日向灘で発生しています。豊後水道・安芸灘付近では広島県呉付近の2001年3月24日の芸予地震(M6.7)が最大です。
今回の地震の2年ほど前には2022年1月22日の地震(M6.6)がありました。この地震の震源地は日向灘となっていますが、地震発生のメカニズムを考えると、豊後水道の地震のグループに入れた方がいいと思います。
主な地震のリストを示します。それらの地震について、震央の位置を地震番号で示しました。(5)が今回の地震で、この近くに約56年前に発生した(1)があります。約2年前の地震が(4)です。
豊後水道・安芸灘において、潜り込むプレート(スラブ)内で発生する地震には、M6を超えるやや大きい地震でも、引っ張り力が働き正断層を生成するメカニズムで発生しています。
その場所は、日本列島を乗せているユーラシアプレートとフィリピン海プレートが押し合いしながら、フィリピン海プレートが負けてユーラシアプレートの下に潜り込んでいる現場で、押し合う力が優勢のはずです。
ところが、反対の引っ張りの力が生じているらしいのです。
そのからくりについては、次の報告でご説明いたします。
(図の作成は東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)
2024.4.23
豊後水道直下フィリピン海スラブの急な曲がりと地震発生の特性
佃 為成
豊後水道一帯の、約2年前の2022年1月22日の地震(M6.6,h45km) や今般の2024年4月17日の地震(M6.6, h39km)は、フィリピン海プレートが沈み込んだ部分(スラブ)の内部で引っ張り力によって発生しました。
地震が生成した断層は正断層です。元々プレートには動きながら押し合う力が働きます。なぜ引っ張りの力が存在するのかを考察してみようと思います。
まず、図1にこの地域のある期間の微小地震の震源分布をしまします。図は佃(2007)からもってきました。潜り込んでいるフィリピン海プレート(スラブ)の中で地震が沢山発生しています。
図2には潜り込む方向に直交する断面で地震の震源分布を描いたものです。これは佃・三浦(2002)からもってきました。このプレートのスラブは、強く曲げられて、深さ150km近くに行くと垂直に立っています。また、曲がっている形はほぼ円を描きます。
潜り込んだスラブは周りより少し重いため下に徐々に下がって行くのですが、大抵の場合、深いところで垂直になるほどまでは曲がりません。
プレート(スラブ)の形が円を描くので、図3のような簡単な図形に対して理論を組み立てることができます。建築や土木、機械工学などで学ぶ材料力学を応用して、このように曲げるにはどのような力が働かなければならないかを調べ、九州方面から強く押されて曲がっていると推定しました(佃・三浦, 2002)。
雲仙、阿蘇、久住、霧島、桜島の火山では物質の上昇があり、地表付近にそれがやってくると横へ広げようとするわけです。その力が作用しています。曲げられたプレートの内部は引っ張りの力が働き、正断層の地震を起こします。今回の地震も、2001年芸予地震もそうでした。プレート内の比較的浅い地震の多くは正断層型です。
一方、日向灘の大きな地震はだいたいプレート境界の逆断層です。
図4には、岩盤にどのような力が加わって、断層が生成され、岩盤が縮んだり、伸びたりするかの様子を描いたものです。これは佃(2011)からもってきました。板を曲げると内側は圧迫されますが、外側は伸びて引っ張り力が働きます。引っ張り力で生成されるのが正断層です。
参考文献:
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佃 為成・三浦勝美(2002),2001年芸予地震とプレートの曲げモーメント,地震2,55, 91-96.
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佃 為成(2007), 地震予知の最新科学, サイエンスアイ新書.
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佃 為成(2011), 東北地方太平洋沖地震は“予知”できなかったのか?, サイエンスアイ新書.
ヘッ
2020.6.16
2020年6月10日土佐湾の地震(M4.6)について
佃 為成
2020年6月10日00:22に四国高知県沖(土佐湾)で直下地震(M4.6, h20km)が発生しました。
高知県黒潮町と中土佐町で震度4。高知県土佐湾付近でM4.5を超える地震は約10年ぶりです(興津崎沖2009.12.6 M4.6 h31km; 安芸市付近2010.10.6 M4.5 h7km)。
気象庁の震源データが整理された1923年1月14日から過去約100年間の四国高知県付近やその周辺のマグニチュード(M)が4.5以上の地震の分布をご覧ください。最近約10年のM4.5以上の地震は黒塗り(●や▼)で示しました。
図の震源分布は、西は日向灘の手前、東は紀伊水道の手前で区切っています。この地域は、1946年12月21日の昭和南海地震(M8.0)の震源域の北の縁に位置しています。この地震の20数年前には、土佐湾東部、室戸岬西方沖でM6.3の地震(1923.12.5)が発生していました。
また、土佐湾東部、室戸岬南方沖には、昭和南海地震の余震としてM6クラスの地震(1947.2.16 M6.1, 1954.4.15 M6.0)が発生しています。
徳島県南部には震源クラスターが見えます。これは1955年7月27日M6.4 h11km の地震とその余震が主なものです。
さて、フィリピン海プレートが四国沖の南海トラフから潜り込んでいます。地震活動の最先端付近にあたる瀬戸内海芸予地域直下では、芸予地震(2001.3.24 M6.7)が発生しています。
地震活動の以上のような履歴を踏まえて、今後の地震活動を見ていきたいと思います。
(図の作成には東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データJMA_PDEを使用)
2020.6.16
四国直下フィリピン海スラブの地震活動
佃 為成
四国沖の南海トラフからフィリピン海プレートが北へ沈み込んでいます。潜り込んだプレート(フィリピン海スラブ)の地震活動をその上の浅い地震活動と比較しながら概観してみたいと思います。
震源の深さを0-30kmと深さ30-70kmに分けて、M1.0以上の地震の積算回数を示します。なお、震源分布図は、分布のパターンが見えやすいように、M2.0以上の地震をプロットしてあります。
2000年ごろから小さい地震の検知率が向上していますから、それ以降のデータを採用します。しかし、2001年3月24日の芸予地震(M6.7) の余震のクラスターによる積算回数の“こぶ”をさけて、2005年からのデータをピックアップしました。
浅い地震もスラブの地震も発生率(回数/日)が当初に比べ20%アップしています。浅い地震の場合は、しだいに活発になってきていますが、スラブでは、2011年頃から傾向が変わったことが見えます(直線が折れ曲がったような)。
(図の作成には東大地震研究所TSEISweb版の気象庁データJMA_PDEを使用)