2024.8.23
2024年8月19日茨城県北部の地震
(M5.1)について
佃 為成
2024年8月19日00:48に茨城県北部でM5.1, 深さ8km, 最大震度5弱の地震がありました。実は、ほぼ同じ所で、2016年12月28日21:38にM6.3, 深さ11km, 最大震度6弱の地震があったのです。
さらに遡って、2011年3月11日東北地方太平洋沖超巨大地震(M9.0)発生後、2011年4月11日, M7.0 を最大とする地震の群れが、福島県南部(福島県浜通り)から茨城県北部にかけての陸地を襲いました。
上記の一連の地震は、東西に引っ張られる力で発生しています。その時の地震は正断層を造ります。しかし、東北地方の岩盤は、太平洋プレートによって東から押されています。押す力で地震が起こると思われますが、引っ張り力だとは、ちょっと変ですね。
M9.0地震の後の詳細な地震情報は、伊藤(2022)を、なぜ正断層を発生させるのかの説明は池田(2022)をご覧ください。
2000年から2024年8月20日までのM≧4.0の地震の震源分布と時系列(M-T図)を示します。
震源分布図には、主な地震:2011.4.11 M7.0, 2016.12.28 M6.3, 2024.8.19 M5.1の震央が示してあります。
M-T図を見ると、2011年のM9.0地震発生以前約10年間はM4.0を超える地震は全く発生していないのが分かります。一方、M9.0の超巨大地震の影響が10数年経った現在も根強く残っています。
(図の作成は東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)
参考文献:
池田安隆(2022):日本海溝における超巨大地震と東北日本外帯の正断層, コラボNo.8, pp.28-36.
伊藤 潔(2022):2011年福島浜通り地震(M7.0)と1945年三河地震(M6.8)
-- 巨大地震後の内陸直下地震 --, コラボNo.8, pp.14-27.
2021.12.10
2021年12月3日山梨県東部の地震(M4.8)について
佃 為成
2021年12月3日 06:37 に、山梨県東部の深さ(h)20kmでM4.9の地震が発生し、大月市で最大震度V弱を観測しました。この日、02:18にM4.1 h20km の地震が先行しています。
ここは、フィリピン海プレートが潜りこめず、ぶつかっている場所にあたり、群発性の地震が発生しています。元はフィリピン海プレートに乗った島だった伊豆が本州にぶつかり半島になり、潜りこめず押し合いをしています。山梨県のところに行くと、若干潜りこんでいるようにも見えます。神奈川県付近では地震発生は深さ10km程度なのが、山梨県に入ると浅い地震もあるが、深さ20kmぐらいの地震の巣があり、今回のM4.1, M4.9の地震は、ここで発生しました。
まず、約100年間の地震分布(M>=4.0)を示します。
つぎに、岩盤の中で押しあう力が増大していないかを、微小地震の発生率からうかがってみたいと思います。2000年以降約20年間の精算回数の図で、M1.0以上の地震活動の推移を見ましょう。
当初、地震発生率(頻度)148回/年だったのが、2005年頃から161回/年、2012年のM5.4の地震発生以降、153回/年です。発生率の増加率は3%ほど。
2021.10.13
2021年10月7日千葉県北西部の地震(M5.9)について
佃 為成
2021年10月7日 22:41 に、千葉県北西部の深さ75kmでM5.9の地震が発生し、東京や埼玉県で最大震度5強を観測しました。
ここは、太平洋プレートとフィリピン海プレートがぶつかっている場所にあたり、さしわたし20kmぐらいの地震密集域(クラスター)を形成しています。関東地域の震源分布とプレートの状況を最初の図で示します。これは文献(1)の第4図に基づきます。
千葉県北西部の深さ70~80kmの震源クラスターの主な地震は、以下のようです。1980年以前は文献(2)に依ります。
1928.5.21 M5.8 h60km
1952.5.8 M6.1 h60km
1980.9.25 02:54 M6.1 h80km
2005.7.23 16:35 M6.0 h73km
2021.10.7 22:41 M5.9 h75km
2005年のときも震度5でした。
1981年発行の文献(2)では25年前後の間隔で発生とあります。
1980年の地震後、25年経って2005年の地震が発生しました。それから16年後が今回です。今回は間隔が短くなっています。
観測網が充実し、小さい地震まで震源決定されている期間の活動の推移を次の図で見ます。震源決定にもれがないと判断できるM1.5以上の地震です。
以前は地震発生率(頻度)145回/年だったのが、2011年のM9.0地震以降、この領域でも地震が増加し、発生率が安定した2015年頃からでも187回/年です。そして、2019年初めから今度は126回/年と3割ほど減少(静穏化)して2021年の地震に至りました(2011年以降の外力増加と、2~3年前からの前兆的何らかの動き)。
(図の作成には東京大学地震研究所のTSEIS web版を使用。データは気象庁のJMA_PDEです)
文献:
(1)石田瑞穂・木村武志:首都圏における地震活動の多様性-フィリピン海プレートの沈み込みに及ぼす伊豆島孤の影響, GSJ地質ニュース Vol.8 No.8, 2019.
(2)東大地震研究所地震予知観測室:千葉県中部の地震(1980年9月25日, M=6.1)前後の地震活動, 地震予知連絡会会報, 第25巻, pp.77-81, 1981