2025.1.6
東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き5)
佃 為成
東海地震の予測のため、遠州灘の南海トラフから北西方向へ潜り込んでいるフィリピン海プレート(フィリピン海スラブ)の微小地震活動を監視します。
最初の図は、2000年1月1日から2024年12月31日までに深さ30-80kmで起こった、M1.0以上の地震の震源分布です。次の図で、震源分布図に示された地震の積算回数の時間推移を示します。
但し、2000~2005年ごろには、2001年4月30日、静岡県中部の深さ30kmで発生したスラブ上面付近の地震(M5.1) の余震活動の“こぶ”が見えます。
ところで、2016年4月より気象庁の震源決定方法変更のため、M0.5以上の地震ではそれ以降の検知地震数は約1.12倍になりました(参考文献)。そこで、今回はM1.0以上としました。なお、M2.0以上としても体勢はさほど変わりません。
2020年ごろまでは地震発生率は平均的に291回/年、それ以降は331回/年に上昇しました。約1割ほどのアップです。2020年以降、スラブにかかる力が増大していることを表しています。
2025.1.6
東海地域の地震活動と地盤変動の比較
--- 2000年1月1日から2024年12月31日まで ---
佃 為成
遠州灘の南海トラフから北西方向へフィリピン海プレートが潜り込んでいます。また、潜り込むプレートに引きずられて東海地方の陸の先端部分の御前崎の地面はどんどん沈下しています。GPSの測定データを検証します。
潜り込んでいるプレート(スラブ)内で、2000年1月1日から2024年12月31日までに深さ30-80kmで起こった、M1.0以上の地震の発生率のグラフが右の図です。震源分布は、解説情報:東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き5) 2025.1.6 をご覧ください。
2020年ごろから発生率が上昇しています。スラブにかかる力が増大していることを表しています。
一方、御前崎の地面の高さが低下していくスピードは、最近ゆるくなってきています。
次の図は掛川に対して、御前崎の地面の高さがどのように変化しているかを表しています。
国土地理院のGPSデータです。2005年から2020年頃まではほぼ直線的に0.671cm/年の率で降下しています。それが、2020年頃から減少率は0.386cm/年の率に減少しています。約半分の率です。
東海地域の地面を押し下げる力が弱くなってきていることを示しています。その力はスラブの方に強く働くようになってきているのでしょう。
(図の作成には東大地震研究所TSEIS web版の気象庁データJMA_PDEを使用)
2022.10.19
地震のマグニチュード別発生頻度とb値
佃 為成
日常、地震はどれくらい起こっているのかを調べるため、地域と期間を限定し、発生する地震の回数を数えてみましょう。そのときマグニチュード(M)も限定します。
日本列島とその周辺の海域、おおよそ沖縄から千島列島南部付近、小笠原諸島までを簡単に日本と呼ぶことにします。
この地域にはM7クラス(Mが7以上8未満)の地震は、だいたい年平均1回発生しています。M6クラスはだいたい10回、M5クラスは100回、M4クラスは1000回ぐらい発生します。
要するに、Mが1 小さくなると数が約10倍に増えます。ところでM8クラスは年平均0.1回、すなわち10年に1回。この法則は長い年月の平均であって、ある年には、M7クラスが2回以上も発生したり、1回も発生しないときもあります。
世界では、M8クラスが年平均1回、M7クラスが10回、M6クラスが100回という具合になります。つまり、すべて日本の10倍になっています。
上の法則を応用すると、それぞれの地域の地震発生のだいたいの予測ができます。大きな地震は回数が少ないので、例えば1つの県ぐらいの広さの地域では、M7以上の地震の再来間隔は数百年や数千年、またはそれ以上になります。しかし、小さい地震については、数十年を振り返ってM4クラスの地震が1年に1回ぐらい起きているならば、M3クラスは年に10回ぐらい、M2クラスは100回くらいと予想できるのです。
この関係は、大きな地震のあとに起きる多数の地震(余震)について調べてもだいたい成り立ちます。群発地震と呼ばれる地震の群についてもだいたい成り立っています。
次ぎに、地震の発生間隔について考えてみましょう。例えばある地域で、M6程度の地震が約10年毎に起こっているとします。すると、Mが1.0上がってM7程度の地震は、約100年毎に起こることになります。
ここで、地震のマグニチュード別頻度の法則を式で表してみます。マグニチュードが MからM+ΔM までの地震の数 n は、
Log n = a – b・M
と表されます。a と b は定数です。b のことをb値と言います。b値はだいたい1.0ですが、場所や期間によってはこれより大きくなったり、小さくなったりします。
b値は、岩盤にかかる力の大きさに関連します。吉川(2022)に、西南日本におけるb値の時間的変化の実例が示されています。
参考文献:
佃 為成(2007):地震予知の最新科学, サイエンスアイ新書,.
吉川澄夫(2022):西南日本における近年の地震活動静穏化と活発化 コラボNo.8, pp.7-13.




