2024.1.16
東海地域の地震活動と地盤変動の比較
--- 2000年1月1日から2023年12月31日まで ---
佃 為成
遠州灘の南海トラフから北西方向へフィリピン海プレートが潜り込んでいます。また、潜り込むプレートに引きずられて東海地方の陸の先端部分の御前崎の地面はどんどん沈下しています。GPSの測定データを検証します。
潜り込んでいるプレート(スラブ)内で、2000年1月1日から2023年12月31日までに深さ30-80kmで起こった、M1.0以上の地震の発生率のグラフが下の図です。震源分布は、解説情報:東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き4) 2024.1.16 をご覧ください。
2020年ごろから発生率が上昇しています。スラブにかかる力が増大していることを表しています。
一方、御前崎の地面の高さが低下していくスピードは、最近ゆるくなってきています。
次の図は掛川に対して、御前崎の地面の高さがどのように変化しているかを表しています。国土地理院のGPSデータです。2005年から2020年頃まではほぼ直線的に0.657cm/年の率で降下しています。それが、2020年頃から減少率は0.338cm/年の率に減少しています。約半分の率です。
東海地域の地面を押し下げる力が弱くなってきていることを示しています。その力はスラブの方に強く働くようになってきているのでしょう。
(気象庁報道発表 南海トラフ地震関連解説情報について
- 最近の南海トラフ周辺の地震活動 - , 2024.1.11 の図に直線を挿入 )
2024.1.16
東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き4)
佃 為成
東海地震の予測のため、遠州灘の南海トラフから北西方向へ潜り込んでいるフィリピン海プレート(フィリピン海スラブ)の微小地震活動を監視します。
最初の図は、2000年1月1日から2023年12月31日までに深さ30-80kmで起こった、M1.0以上の地震の震源分布です。次の図で、震源分布図に示された地震の積算回数の時間推移を示します。
但し、2000~2005年ごろには、2001年4月30日、静岡県中部の深さ30kmで発生したスラブ上面付近の地震(M5.1) の余震活動の“こぶ”が見えます。
ところで、2016年4月より気象庁の震源決定方法変更のため、M0.5以上の地震ではそれ以降の検知地震数は約1.12倍になりました(参考文献)。そこで、今回はM1.0以上としました。なお、M2.0以上としても体勢はさほど変わりません。
2020年ごろまでは地震発生率は平均的に315回/年、それ以降は340回/年に上昇しました。約1割ほどのアップです。2020年以降、スラブにかかる力が増大していることを表しています。
2023.2.11
東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き3) (改訂)
佃 為成
東海地震の予測のため、遠州灘の南海トラフから北西方向へ潜り込んでいるフィリピン海プレート(フィリピン海スラブ)の微小地震活動を監視します。
下図は、2001年4月30日、静岡県中部の深さ30kmで発生したスラブ上面付近の地震(M5.1) の余震活動を避けて、2005年1月1日から2022年12月31日までに深さ30-80kmで起こった、M0.5以上の地震の震源分布です。
次に、震源分布図に示された地震の積算回数の時間推移を示します。2016年ごろまでは地震発生率は平均的に1.94回/日、2017-2018年頃はわずかの上昇が見えます。2019年ごろから2.50回/日にアップ。
なお、2016年4月より気象庁の震源決定方法変更のため、それ以降の検知地震数は約1.12倍になりました。2017-2018年頃の変化は主にこの変更のためと考えられます。詳しくは参考文献5) をご覧ください。
あたかも以前から新しい決定法が適用されたとして、2016年以前の地震発生率を1.12倍(2.17回/日)にしてみました。図の太線のグラフです。2019年ごろから発生率が約2割上昇しています。スラブ岩盤を押し込む力が大きくなっていると推定されます。要注意です。
参考文献:
1)東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動 2020.8.24 コラボNo.6 p.90
2)東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き1) 2021.1.29 コラボNo.7 p.95
3)東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き2) 2022.7.22 コラボNo.8 p.107
4)東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き3) 2023.1.17
5)東海地域直下フィリピン海スラブの地震検知状況(改訂) 2023.2.11
2023.2.11
東海地域直下フィリピン海スラブの地震検知状況(改訂)
佃 為成
地震がどれくらい小さいものまで起こっているのかを調べるため、地域と期間を限定し、発生する地震の回数を数えてみます。そのときマグニチュード(M)も限定します。地震のマグニチュード別頻度の法則を式で表すと、マグニチュードが MからM+ΔM までの地震の数 n は、
Log n = a – b・M (グーテンベルグ・リヒターの式)
と表されます。a と b は定数です。b のことをb値と言います。b値はだいたい1.0ですが、場所や期間によってはこれより大きくなったり、小さくなったりします。
今、東海地域に潜り込んでいるフィリピン海プレート(スラブ)の中で発生している地震を取り出し、マグニチュード別に回数を数えてみます。M の幅
(ΔM =0.1)毎に数えます。
マグニチュードが小さいほど回数は多いですが、直線で表せる範囲は限られています。n が直線から外れるもっとも小さなマグニチュードMx を検知能力の下限と判断します。それ以下の小さな地震の検知には漏れがあると判断するのです。
規模別地震回数のグラフで、N は、マグニチュードがM以上の総数を表しています。マグニチュードが非常に小さくなると n はどんどん小さくなっていますが、N は増えもしないけれども減りもしない状態になっています。
この領域の地震については、M>=0.5 であれば、少なくとも3個所の観測点において地震波形が記録され、震源が決定された、すなわち検知されたと見なすことができます。
ところで以前、気象庁では、自動で計算機が読み取った地震波検測値を人がすべて確認していましたが、自動処理法・技術の向上により自動処理のみでも正しい震源が迅速に得られるようになったので、2016年4月から、小さい地震の震源決定を自動に任せることになりました。この震源決定方法変更によって検知地震数がどれ位増加したのかを見積もってみます。この点を吟味してみましょう。
対象にする震源の領域は、参考文献 1) の報告を同じです。
扱う地震の震源の空間的、時間的制約:
空間領域: 136.5 – 138.5°E, 34 – 36°N 深さ30 – 80km
期間1 : 2014-2015年 期間2 : 2017-2018年
マグニチュード(M) : 0.5 – 1.5
データを検索すると、期間1 では 1,241個、期間2 では 1,389個。期間2 では期間1に比べ1.12倍となります。
次にマグニチュードを範囲を-1.0 - 6.0 として、それぞれの期間別にM別頻度分布を求めてみます。どちらもM0.5以上がもれなく検知されていると判断できます。それ以下の小さい地震を比較すると、震源決定方法変更後の検知地震の数が多いのが分かります。
参考文献:
1) 東海地域直下フィリピン海スラブの地震活動(続き3) (改訂)
2023.2.11
2) 佃 為成(2007):地震予知の最新科学, サイエンスアイ新書.
3) 吉川澄夫(2022):西南日本における近年の地震活動静穏化と活発化
コラボNo.8, pp.7-13.